建設アスベスト裁判の到達点と課題

By | 2021年10月4日

  アスベスト救済~こ一年のとりくみが重要

弁護士  長野 順一

長野弁護士がいの健北海道センターの第9回総会で、発言された要旨を紹介します。

建設アスベスト訴訟については、今年極めて大きな成果を勝ちとることが出来ました。
2005年にクボタショックがあり、建設業者にアスベスト被害が広がっていることが分かりました。建材の8割が建設関係に使われ、アスベストの危険性を再三に渡って指摘されておりながら、国は充分な規制もせず野放しにし、2006年にようやく全面禁止になりました。

国とメーカーの責任を明確に

アスベスト被害を野放しにした国と製造販売しつづけたメーカーの責任をはっきりさせて、不十分な救済制度を十分な救済がされる制度にしていくとの目的を持って2008年に東京で訴訟をおこしました。
北海道では2011年度に札幌地裁に提訴して、それから6地裁で訴訟が起きて、1次、2次、3次と全国で訴訟を展開してきました。
私たちは、まず規制をしなかった国の責任と、被害が分かっていながらアスベストを販売し続けた建材メーカーの責任を明確にさせることこそ、解決に絶対必要であると考えて闘ってきました。
残念ながら最初、2012年に判決がでた横浜地裁では、国もメーカーも、どちらの責任も認めずに負けました。国も十分危険だと分からなかった、あるいは企業も分からなったとメーカーの目利き料や国も責任を否定しました。

国による給付金制度が創設

その後、国の責任を認める判決が東京地裁で出され、更にメーカーの責任が認められました。
その中で、1人親方の被災害が東京高裁で認められ、2021年5月17日に最高裁は一人親方を含めすべての作業従事者の国の責任を認め、メーカーも断罪しました。
5月17日の判決の翌日、国と原告団の間で基本合意が交わされました。
これによって、国は責任を認め給付金制度を作ると約束し、6月には法律が出来ました。来年4月からは給付金制度が運用されます。労災の適応がない一人親方を含めて、建設作業に従事したことがはっきりして該当する病気にかかったことが証明されれば給付金を受給できるところまで来ました。
しかし、最高裁はメーカーの責任を認めましたが、基準を明確にしたわけではなく、責任の基準をはっきりさせることが今後の課題です。今の救済金制度も本来なら国と半分はメーカーから出させるもの。メーカーを含めた救済制度を実現することがこれからの課題でます。

全国で初めて和解が成立

一方国との和解が着々と進んでいます。
2021年8月5日に札幌高裁が全国で初めて、基本合意に基づく22名の被災者との和解が成立しました。北海道が最初です。但し、メーカーとの間はこれかです。救済制度に基づく救済を求めていくことが課題になりますのでこれからの一年が重要になってきています。