「広い労働者概念」に基づく権利保障を
厚生労働省の「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」は企業から報酬を得る請負型の働き手が約170万人いるとの試算を示しました。これは自営業者約538万人に対する調査結果です。
請負型で最近増えているのが、飲食宅配サービスの配達パートナーやウェブデザイナーといったインターネットを通じて仕事を請け負う働き手です。労働者のように働いていますが、企業の健康保険や厚生年金には加入できず、労働法上の保護はありません。
調査では、働き方の実態もまとめ、取引先企業とのトラブルで最も多かったのが「報酬の支払いが遅れた」(18・7%)、「仕事の内容・範囲についてもめた」(17・4%)、「報酬が一方的に減額された」(13・3%)、「報酬が全く支払われなかった」(7・5%)でした。
独立自営業者を続けるうえでの問題点について、「収入が不安定、低い」(45・5%)が最も多く、「仕事を失った時の失業保険のようなものがない」(40・3%)「「仕事が原因でケガや病気をした時の労災保険のようなものがない」(27・7%)と答えています。
2016年1月、厚労省は「働き方の未来2035」を発表し「2035年の企業はミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となり、多くの人はプロジェクトの期間内はその企業に所属するが、プロジェクトが終了するとともに別の企業に所属する・・・・・人は事業内容の変化に合わせて柔軟に企業の内外を移動する形になっていく」と未来を描きました。その後、「会社員は消える」「自分の仕事は自分で守る」などの「フリーランスの勧め」が広がりましたが、先陣を切ったアメリカでは請け負い就労者が減少し、イギリス・フランス・ドイツでも労働者と同等の保護政策がとられています。
厚労省の「検討会」ではこうした実態と世界の流れをくみ取った対策を講ずることが求められています。
いの健ニュース 2019.6.1号から転載