静かな時限爆弾!~アスベストによる健康破壊~

By | 2017年7月1日

6月12日にNHKクローズアップ現代で『新たなアスベスト被害~調査報告・公営住宅2万戸~』が放映され、大きな反響を呼んでいます。いの健道センター理事長でアスベストの診断、治療に取り組んできた細川誉至雄医師(勤医協札幌病院)のコメントを掲載します。

NHKが6カ月かけて調査したとの事です。全国各地にある公営住宅に暮らしている人たちがアスベストの危険性にさらされていた事が判明、住んでいる人の数は推計では23万人以上にのぼるとの事でした。本来、国や都道府県、自治体が責任をもって調査、分析、被害を止めるための除去対策をとるべきところですが、一向に進まない中、NHKが独自の調査(NHKもすごい組織力ですね)を行って、情報を提供したわけです。

現在もアスベストが使用された建物の約半数は除去されないまま残っています。

アスベストが原因で中皮腫や肺がんで亡くなる人は今や交通事故で亡くなる人より多いと推定されています。アスベストは発がん物質ではありますが、吸い込んですぐ発症するわけではなく発症までに数十年以上かかるため気づかれない事も多く静かな時限爆弾と言われる所以です。

中皮腫で亡くなる人は20年前の3倍以上に増えました。アスベストの約90%は建物の材料として使われ、スレート材や形成板は、一般住宅にも広く使われました。昨年札幌市で小中学校の煙突断熱材破損による給食停止でアスベストがまだ放置されている事が問題になりました。その後「建築物石綿含有建材調査者」により91校を調査し294本に断熱材があり250本の煙突が使用されていた事が明らかになりました。以前の調査では、素人が目視で“ない”と判断し報告したのが原因です。

子供たちが将来アスベストの被害者とならないためにも今できる対策が必要です。増改築を繰り返す建物の石綿調査は専門家による定性と定量分析を行う必要があります。そのためには「調査者」の養成を急ぐと同時に国や、都道府県、自治体は情報を公開し責任をもって対策を講じるべきです。