職場におけるハラスメントの実態 

By | 2022年9月2日

 退職強要に労働組合と共にたたかう

                札幌ローカルユニオン「結」  吉根 清三

ハラスメント被害でメンタル不全になった方が「結」に加入して労使交渉で雇用を確保してきた事例について報告します。

 パワハラでうつ病発症、退職を強要する会社

 Aさん(48歳男性)は、木材の総合商社の札幌事務所に勤務しています。総合職として、国産材の営業を行っていました。
 2016年、上司のパワハラでうつ病になり5月から11カ月休職し、2017年4月に復職しました。
 しかし復職後、過労で体調を崩し2018年4月に年休取得申請したところ拒否され、休職にすると言われ、前の(17年4月の)復職辞令も取消されそうになりました。
 同年7月、会社は、Aさんを一方的に休職させてメンタル不全を憎悪させたため、Aさんは、2019年8月までの休職を余儀なくされます。
 やっと復職すると、会社は、Aさんに掃除や雑用など過小業務しか与えずに自主退職するように仕向けました。
 家族との生活を守るために耐えて仕事を続けていましたが、2020年2月に入ると執拗な退職勧奨を受けるようになりました。

 労働組合に加入し不当な攻撃とたたかう

  Aさんは、2月10日「結」に加入し、団体交渉で退職強要は止めさせたのですが、前のような業務遂行が困難なため、2020年6月からリハビリを兼ねた労働条件(残業なしの6時間勤務など)の覚書を結び、庶務全般の軽労働に就いています。
 会社は、2021年9月にAさんが総合職のレベルかどうか判定し、レベル以下なら期間雇用の嘱託職員にしようと画策し、6か月間の「業務知識習得プログラム」に就かせ、2022年5月にレベル以下だと判定して嘱託職へ雇用契約を変更するよう提案してきました。
 組合は、会社の提案に合理性はないと提案を拒否しましたが、雇用確保と労働条件を守るためのせめぎあいが続いています。

 労災申請で会社の不法行為を審査

 また労使交渉とは別にAさんは、メンタル不全の原因が会社の不法行為にあるとして2021年12月に代理人を通じて労災を申請し監督署による審査がすすめられています。
 会社は、私傷病休職規定を根拠にAさんを自然退職させようとして失敗し、いまは嫌がらせによる自主退職、もしくは解雇しようとしています。
 会社休職規定は、休職期間満了で自然退職としています。 Aさんの場合、2018年当時、休職期間が2年でした。同規定は「復職しても1年以内に同一、または類似する疾病により連続、断続問わず30日以上欠勤ないし完全な労務提供ができないと認められる場合、復職を取り消し、復職前の休職日数に通算する」と定めています。
 しかしAさんが年休取得権を行使したため、休職期間を通算2年として自然退職させようとした会社の思惑は頓挫しました。


 いま団体交渉で解雇強行を押さえ込んでいますが全く予断を許しません。
 就業規則の解雇条項は「①精神もしくは身体に故障があるか、又は疾病のため業務に耐えられないと認められたとき②勤務成績又は業務能率が著しく不良で、改善の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき」は解雇出来るとなっており会社がその気になれば強行される可能性があります。
 労災認定を受けることができれば、雇用確保と労働条件改善に向け優位な立場で労使交渉ができると期待しています。