建設アスベスト第2陣訴訟判決

By | 2022年6月6日

建材メーカーの企業責任も断罪

   国と企業で屋外作業者にも補償を

北海道建設アスベスト 弁護団 事務局長  長野 順一 弁護士

2022年4月28日、札幌地方裁判所(民事第3部 中野琢郎裁判長)は、北海道建設アスベスト第2陣訴訟について、被災者17名中11名のアスベスト被害に対する株式会社エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント株式会社、ニチアス株式会社、株式会社ノザワ、株式会社エム・エム・ケイの合計5社の責任を認める判決を言い渡しました。

 建材メーカー5社の加害責任認定

既に最高裁は、2021年5月17日の判決で、建材メーカーらに警告表示義務違反があり、主要な原因建材を製造・販売したメーカーが共同不法行為責任を負うとの判断を示していましたが、この判決はその判断を前提として、被災者11名に対する上記の5社について、加害企業と認定したものです。
また判決は、有責とされた企業の責任割合を、原告ごとに3割ないし5割と判断しました。有責企業の責任割合については、これまでの判決では3分の1程度とする判断が多かっただけに、企業の責任割合を重く認定した点は前進と評価できると思います。

 屋外作業者に対する責任否定は不当判決

他方で、判決は、屋外作業を主とする職種や、解体作業従事者との関係では建材メーカーの責任を否定しました。
九州建設アスベスト第1陣訴訟では、最高裁も、屋外用建材であっても屋内で切断等の作業をする場合があることなどを理由として建材メーカーらの責任を認めた福岡高裁の判断を維持していますので、そのことと比較すれば、今回の判決は不当といわざるをえません。

 予見できた危険性と対策怠った責任は重い

また、建材メーカーにおいて既設建材についても広く建設作業者等にアスベストを含有する事実とアスベスト疾患罹患の危険性等を周知することは十分可能だったので、それを怠った企業は、解体作業者との関係でも当然責任を負うべきであり、その点の判断も不十分です。
さらに、一部の原告については、加害建材の現場への到達や原因建材からのばく露が否定され、メーカーの責任が認められず、この点も極めて不当です。
これらの点については、今後控訴審においてあらためて判断を求めて行くことになります。

 企業は責任を認め和解解決に応じるべき

ところで、判決により責任があると判断された上記5社は、これまで最高裁を含めて繰り返し責任を認められているにもかかわらず、未だに責任を争い、和解解決にも応じていません。そのような態度は極めて不当であり、速やかに責任を認めて被災者に謝罪し、早期和解解決のために、あらためて、世論の力で有責企業に、早期の解決を迫って行く必要があります。

 国と記号の責任で被災者の全面救済を

また、国は、建設アスベストの被害者救済のため本年2月から給付金制度を開始しましたが、屋外作業者はその給付対象から除外されています。屋外作業者である被災者も屋内作業者と同様にアスベスト疾患に苦しんでいるのですから、国には、その事実を直視し、給付金の支給対象に屋外作業者を含める制度改正を速やかに行うことが求められます。そして、現在この給付金制度には加わっていない建材メーカーも参加した、アスベスト被害の全面救済のための基金制度を、早期に実現する必要があります。 いの健北海道センターニュースから転載