2020北海道会場 過労死防止対策推進シンポジウム

By | 2020年12月4日

厚生労働省主催の過労死等防止対策推進シンポジウムが11月27日(金)午後、札幌市内で開催され、経営者、会社員、公務員、労組員などが参加しました。 新聞記者の牧内昇平氏の基調講演、過労死遺族の体験報告の概要を報告します。

 基調講演 「過労死を他人事から自分毎事に」 牧内昇平氏 新聞記者

2006年朝日新聞社に勤務した牧内さんは、経済部で「上昇志向が強かった」と振り返ります。東京本社では財務省担当となり、G20やG7など海外取材も多く、「朝回り」「夜回り」で早朝から深夜まで働き「過労状態」でした。子供ができても奥さんからの相談に対応できず、奥さんが「心の病」になりましたが、それでも仕事に固執した状態でした。上司が気づいてくれて「労働」に部署異動になり、それから「過労死」を取材し、50人を超える過労死・パワハラ死遺族を取材しました。

そこから過労死が「自分事」となり、「労働時間管理」を行い、深夜勤務をやめ、子供と一緒に食事をとる様にしたと言います。職場でも「心の病のケア」の相談窓口を設け、仲間との声かけと自分の「ゆとり」を意識しました。仕事に対する価値観を変え、「生きるために働く」「自分の向上心を抑える」「読者には納得のゆく記事を月1本書く」を何度も言い聞かせてきたとのことです。

パワハラに関して「どこでも起こる」として、勤務して7年目の30歳代の自治体職員の自死事例を取り上げました。その職員は狭い部屋に新規事業の担当として4人のチームに参加しました。役所のエース、仕事ができる人の集まりでした。奥さんから聞いたメモに「仕事に行きたくない」「毎日怒られる」と記され、同僚の聞き取りで上司から「どんな仕事ならできるんだ」「こんなことで給料もらえると思うな」と言われていたとのことです。上司もこれらを認めて「公務災害」が認定されました。

その後、牧内さんの取材に応じた加害者の上司は、亡くなったことは「私が追い詰めた」と言いつつ、「仕事ができなかったから、本人のせいだ」と語りました。「仕事ができる、できない」を人の評価基準とする上司は「仕事第一」の考え方でした。牧内さんはワーク&ライフを重視する人との間で、コミュニケーションがない職場が悲劇を生んだと指摘しました。ハラスメントは人と人の関わり合いの問題であり、被害者と加害者の問題ではなく、職場の同僚たちの関わりがあれば防ぐことが出来た事例であり、傍観してはいけないと強調しました。

最後に「労働時間と会社で言われたことをメモする」「『仮に辞めたら』と心に転職活動を」「サボって休んで喫茶店に」「危なくなる前に、すぐ逃げて」と呼びかけました。

家族の体験報告

最初にN市の水道局に勤務していた夫を亡くした妻と娘さんの訴えがビデオ放映で伝えられました。
次に大学院で建築を学び、札幌市内の建設コンサルタント会社に勤務した28才の息子さんを失った母親が、200時間を超える時間外労働をしていたとして会社の責任を強く指摘しました。
また、今年10月に裁判で労災認定を得た、吃音のある新人看護師の遺族は、過労死後7年のたたかいと過労死の根絶を訴えるメッセージを家族の会に託し、会員が代読しました。