アスベスト労災不支給決定を労災再審査請求で逆転決定!

Mさん(男・64歳)は、アスベスト肺がんで業務外認定となり、審査請求でも不支給決定でしたが、再審査請求で労災認定を勝ち取りとりました。
事件を担当した吉田玲英氏(弁護士)に、決定までの経過とアスベスト労災認定の問題についてお聞きしました。

労災不支給決定が再審査請求で取り消された事案

Mさんは、労基署の推定によれば、昭和56年4月から平成13年5月までの期間中、12年3ヶ月間、とび職や解体工として、複数の建設事業において石綿ばく露作業に従事していた労働者です。Mさんは、平成25年7月、肺がんと診断され、その後、入退院を繰り返しながら療養を続けています。平成26年3月に労災による休業補償の請求を行いましたが、不支給となりました。不支給の理由は、乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が認定基準の5千本に満たない3,501本であるため、石綿ばく露作業によって肺がんが発症したとは認められないとしたものでした。

アスベスト労災認定基準の問題点

Mさんの事案で最大の問題となったのは、胸膜プラークが認められず、しかも乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が5千本に満たなかった点です。

厚生労働省が取りまとめた、『石綿による疾病の認定基準に関する検討会』の報告によると、乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が1千本以上あれば、職業ばく露が疑われるレベルとのことです。そして、Mさんの石綿ばく露作業歴は12年3か月もあったにもかかわらず5千本に満たないから、という理由でMさんの労災申請は却下されました。

Mさんは直ちに審査請求を申し立てましたが、同じ理由で、審査請求も認められませんでした。
これはまさに、石綿による肺がんの労災認定基準の不当性を示すものといえます。5千本以上という要件は平成24年に新たに付け加えられたものですが、それ以前は、石綿ばく露作業歴が10年以上あり、乾燥肺中に石綿小体が存在すれば、石綿小体の本数にかかわらず労災が認定されていました。

平成24年に5千本以上という新たな要件が付け加えられたことにより、労災認定基準が改悪されたのです。Mさんは、平成24年より以前に労災申請をしていれば、労災認定を受けられたにもかかわらず、肺がんを発症した時期が遅かったために労災認定を受けることができませんでした。このような労災認定基準の改悪は、決して許されるべきものではありません。

逆転認定のポイントと今後の課題

再審査請求を申し立てた後で、Mさんが肺がんで手術した際のビデオを入手することができ、医師の診断を受けたところビデオ映像に薄い胸膜プラークが見つかりました。これにより、平成28年6月15日、Mさんに対する労災審査請求の不支給決定が取り消されるという逆転裁決を勝ち取ることができました。

Mさんの場合は、手術中のビデオ映像から胸膜プラークが見つかったことにより逆転裁決となりましたが、平成24年に改悪された労災認定基準の問題は依然として残ったままとなっており、これが今後の課題といえるでしょう。

アスベスト製品の規制をせずに放置しアスベスト被害を拡大させた国は、アスベスト被災者を救済する責任があります。労災が不支給となったとしても、このように労災審査請求や再審査請求で逆転できる場合も少なくありません。不当な対応にもあきらめず、是非ご相談ください!

  1. 弁護士 吉田 玲英(八十島法律事務所)