「産業医の新たな役割」を考える

 働き方改革関連法案

  医師不足と産業医

「働き方改革関連法」が今年の4月から施行された。同法は労働基準法や労働安全衛生法など関連法8法を一括し、細部の検討なしに決めたため今後様々な問題の発生が予想される。高度プロフェッショナル制度も現時点でまだ全国での利用者は1名のみとの事である。医師の長時間労働も5年先送りされ、地域医療を支える病院や研修医については上限を年1860時間に設定など異常な長時間労働を容認する内容で検討されている。日本の届け出医師数は約31万人で、人口10万当たり世界55位(WHO統計)と先進国では最も少ない。医師不足の中での今回の改正安衛法は産業医の中立性や権限強化を目的としている。詳細は省くが第13条第5項では産業医の「勧告権」も追加された。なぜいま産業医の勧告権なのか?

  衛生委員会での産業医の役割

安衛法18条では、事業者には常時50人以上の労働者を使用する職場に衛生に関し調査審議して事業者に意見を述べるための衛生委員会設置が義務付けられている。また委員会は月1回以上開催し、委員会構成メンバーとして産業医1名を選任(嘱託)する。1000人以上の職場では専属産業医が必要である。
産業医は月一回の職場巡視を行い、衛生委員会に出席し(義務ではない)「事業場において労働者の健康管理等について専門的な立場から指導・助言を行う医師」であり、あくまで相談に乗る立場である。そもそも労働者の安全や健康は事業主の責任で守られるべきであり、それを監督助言指導するのは労働基準監督官であり産業医ではない。
しかし長時間労働、高ストレス者の面接指導により産業医が就業上の処置(就業制限や要休業)が必要と判断し意見を述べても事業主が適切な対応をとらない事案から過労死に繋がる問題も指摘されていた。

産業医数はおよそ10万人(日本医師会登録)と多いが、専属は約1500人と少なく大半が嘱託(本業は別)である。急に産業医に権限強化と言われても違和感があるのが現状である。しかも「勧告」は「特別な手段であること」となっており定義もあいまいである。5月末に名古屋で行われた産業衛生学会でも「勧告」の解釈にも様々な意見があった。労働者の健康を守る観点で見ると、改正を契機に事業者に確実に安衛法を遵守させていく事が重要ではないか、と感じている。

                                                                                 勤医協札幌病院 医師・産業医 細川 誉至雄