杉本 綾さん民事裁判

By | 2022年1月7日

 証人尋問行わず「和解」に向けた協議へ

杉本綾さんの過労自死事件について被告のKKR札幌医療センターに対し行われている民事訴訟は、5月13日の第7回期日で原告(母親)が意見陳述を行って以降、7月と9月に進行協議が行われ、裁判官から提起された「和解」に向けての協議という新局面を迎えました。
2021年5月13日の口頭弁論以降、被告は6月末にKKR札幌医療センターの看護職員体制や病院の医療体制全般について「適正」であるとする準備書面を提出しました。原告としては、あえて反論するまでもないとしました。
コロナ感染症対策で裁判の進行も遅れましたが、7月20日に行われた進行協議期日では、証人尋問に関する検討が提起されました。
原告側は3人の証人を準備することとし、原告(母親)、綾さんの同期で同じ病棟に新人看護師として勤務していたKさん、それに加えて同じ病棟で働いていた、他の病院勤務経験のある先輩看護師Hさんにお願いすることにしました。Hさんへの依頼は母親、弁護士から丁寧な説明を繰り返し、了承を得ることが出来、裁判所に3人の人証を申し出ました。

9月17日の進行協議では、裁判長から原告、被告併せて6人証人申請がありました。裁判官は尋問時間がかかりすぎること、10年近く前の出来事であり記憶が不鮮明と思われることなどから、「和解」に向けた協議を検討してほしいと提起がありました。

原告側は協議の上、和解協議についての原告の意見を「上申書」として、10月14日裁判所に提出しました。上申書のポイントは①亡杉本綾の死亡は被告の安全配慮義務違反が原因であることを確認し、②被告は原告に謝罪すること、③被告は再発防止対策を徹底すること、④被告は原告に損害賠償金を支払うことなどです。

2021年10月28日の進行協議では原告の上申書提出が確認されましたが、被告からはこの件に関する回答はありませんでした。
被告の意見はKKR札幌医療センターの上部組織である国家公務員共済組合連合会の本部で、重要事案として対応している。死亡事件であること、新人看護師の事例であること、労災が自庁取消で認定されていることから、全経過を踏まえて「基本姿勢を定めることが必要」と考えている。その検討のため、11月いっぱいの期間が欲しいとのことでした。

 和解に向けて不誠実な対応は認めない

2021年12月9日に行われた進行協議で、KKR側は、原告(母親)が提出した上申書のうち、損害賠償金額についての協議を先行させたいと裁判長に申し出ました。
原告側は、今回の裁判はKKRによる杉本綾さんへの安全配慮義務違反が原因であり、それを認め遺族に謝罪し、再発防止策の徹底こそが重要と求めてきました。今回のKKRからの申し出に対しては当然容認できないとの態度を示しました。

今回の進行協議に集まった参加者からは「金で解決すれば済む話ではない」「国家公務員共済は重要事案として取り扱っていたのではないのか?」など被告に対する不信の声が聞かれました。
弁護団からは、11月の1カ月間かけて、「基本姿勢を定めてくる」と持ち帰った結果がお金の話とは、極めて不誠実な対応だ。原告側としては、上申書の内容をすべて受け入れてもらわなければ認めることは出来ないとの説明がなされました。
支援する会からは、被告側の不誠実な対応に対し、国家公務員共済本部に対し、事件の重大性に向き合って、真摯に対応するように申し入れを行うこと等が検討されています。

次回の進行協議は2022年1月26日14時から札幌地方裁判所で行われる予定です。(2021.12.1いの健ニュースから)

 KKRは真摯に話し合いに向き合うべき

  1月26日に行われた杉本綾さん過労自死民事訴訟進行協議でKKR側は、綾さんの自殺とうつ病の関連を否定する医師の論文を新たに「証拠」として提出しました

杉本綾さんの過労自死事件民事訴訟は、和解の協議に入っていることを「いの健にゅーす」でもお伝えしてきました。
2021年12月9日の進行協議では、被告KKR代理人より、損害賠償額の協議を先に進めたいとの申し入れに対して、それは認められないと原告側が拒否し、持ち帰る形となりました。

 裁判の経過を否定する証拠を提出

年が明けた2022年1月26日の進行協議では和解に向けた話し合いが進展するものと考えていました。
しかし被告側は1月19日に突然、杉本綾さんの自殺はうつ病とは関係ないという新たな「証拠」を裁判所に提出しました。東京医科大学精神医学部の主任教授および、斗南病院の精神科科長の名による「証拠」とする論文は、杉本綾さんの自殺はうつ病とは言えないという、これまでの裁判内容を否定する内容でした。
原告および弁護団は、この事に対し、「裁判長の提案により、和解に向けて真摯に取り組んできた努力を無にする行為」として26日の進行協議に向かいました。

 話し合いを優先 証拠採用せず

進行協議後、経過報告を行った島田度弁護士からは、『裁判所側は、進行協議中であるので、被告が提出した2名の医師による「証拠」については採用せず、和解に向けた話し合いの継続を表明し。
被告側は話し合いの継続は了承したものの、和解に向けた大きな要素である安全配慮義務違反については「受け入れがたい」との態度表明があった』と報告がされました。
今後改めて、安全配慮義務違反が話し合いの大きな争点になっていきます。
次回進行協議は3月4日午前?時からの予定です。(2022.2.1いの健ニュースから)