働く人の安全衛生活動

By | 2021年11月24日

 コロナ禍で福祉に働く人の声アンケート=調査結果から見る労働者の実態~①

             岡 秀子  全国福祉保育労働組合北海道地方本部

福祉現場は、新型コロナウイルス感染が拡大する中でも開所が原則で、利用者の尊厳を守り、安心して生活できるために平常時と変わらず事業運営をおこなってきました。 社会的に必要とされる「エッセンシャルワーカー」と感謝される一方、日頃から慢性的な人手不足の中で緊急事態に対応する労働者に対して十分な処遇改善がおこなわれていない現状があります。
この調査は、総合社会福祉研究所と福祉保育労が共同で、福祉職場で働く労働者の実態と課題を明らかにすることを目的に当組織の関係団体等が呼びかけました。
・調査期間:2021年1月~5月の5カ月
・ 回答:1082件
・業種:認可保育所40%
障がい者施設24%
高齢者施設12.9%
児童福祉施設12%
その他10%

89%が「仕事に対するやりがい」を感じているけど…
仕事に対しての意識は、高い割合で「やりがいを感じている」という半面、「辞めたいと思ったこと」について、82%の人が「かなりある」「たまにある」とこたえました。

コロナ禍での労働者の現状と意識
新型コロナウイルス対策をおこなう中で「働き続けることの意欲」の変化についての質問では、「特に変わらない」18%に対し、「仕事の重要性や社会的責任の割には評価が低いと改めて感じた」の回答は57%。
エッセンシャルワーカーと評価され、国や自治体で補助金等が支給されても、労働者には恩恵を全く感じられない現状が読み取れます。
「コロナ禍で負担に感じる労働」の1位は「感染予防等の業務量の拡大」ですが、利用者支援をどのように見直し対応するかなどの細かい打合せもこれまで以上に増えていることから「利用者や家族への対応」「利用者との外出制限」なども上位にとなっています。
従前から福祉現場の時間外労働は常態化していますが、「勤務時間前に出勤していた」63%、「勤務時間後残業」77%と、コロナ禍による業務量の増加が伺えます。さらに障がい者施設と認可保育所では4割を超える人が「時間外手当が全くついていない」と回答しました。
人手が足りないと回答した人は、49%。人手が足りない中で、過重な労働を強いられている状況があります。
こうした声に誠実な対応がなされぬままの状況が続くと、専門的な福祉労働の継承ができなくなるのみならず、労働者確保難によって福祉現場の崩壊が進行していくことが危惧される結果となりました。

労働組合の価値
この調査で、労働組合に加入していると答えた人は58%。上記の超過勤務手当について組合がない職場では88%が「全くついていない」と回答しています。さらに有給取得や休憩時間なども労働組合の有無で大きく差があることがわかりました。改めて不十分な福祉政策の改善の必要性とあわせて、労働組合の果たす役割が明らかになる調査となりました。


働く人の権利と健康を守る労働組合の役割~②

   パワハラ争議報告・コロナ禍のメンタルヘルス調査

             田村 優美  北海道医療労働組合連合会

2021年8月21日に開催された「いの健センター」第9回総会での発言を紹介します。

1点目は、道医労連が現在取り組んでいるパワハラ裁判について。2点目は、コロナ禍における医療労働者のメンタルヘルスについて報告します。

医療・介護現場で継続するハラスメント

はじめに、白石区にある「老人保健施設生きがい」で起きたパワハラ・不当解雇・不当配転裁判ですが、約3年半の当事者たちのあきらめないたたかい、そして皆様のご支援のおかげで、すべての事件で全面勝利と言っても過言ではない地裁判決を勝ち取りました。
総看護師長からの執拗なパワハラ、労働組合つぶしである不当解雇や不当配転、精神的に追い詰めるため、アパートの一室に「庶務課」をつくり監視カメラで監視するという、異常な経営陣です。法人は控訴し、まだ労働者を傷つけ続ける姿勢です。
報告集会で当事者のOさんは「支えがあったからたたかえた。最後まで、支えてほしい」と話しております。ご支援をいただく場面となりましたら、お知らせさせていただきます。
つづいて、「恵和会老人保健施設えん」のパワハラ裁判です。Kさんは、受付事務として勤務していました。上司が退職し主任へ昇格し間もないころ、市の実地指導に向けて準備を進めました。初めての業務のため上司にも協力を求めましたが得ることはできませんでした。

執拗ないじめといやがらせ
手探りで完成した資料は、問題がなかったにもかかわらず、上司から「できないならあなたの異動も考えなければいけない」と言われ、事務主任から降格され相談員への異動が言い渡されました。
受け止められなかったことに加え、脅しのようなことを言われたこと、やりがいを奪われたことにショックを受け抑うつ状態となり休職に追い込まれました。
復職後も医師の診断書を無視し、初日から外勤を命じ、さらに業務打合せから排除するなどしました。一審の札幌地裁は請求を棄却しました。9月1日、札幌高裁でのたたかいが始まります。医療法人社団恵和会は宮の森病院でもハラスメント、労組との団体交渉を拒否するなど社会的にも信頼できない行為を連発しています。案の定、人手が不足し、入院・入所されている高齢者の尊厳が守られないリスクのあるケア体制となっています。正しい判決に向けて署名に取り組んでいます。あわせて介護保険改善の署名にも、ご協力お願いします。

5割の職員に抑うつ傾向
次に、コロナ禍における医療介護労働者のメンタルヘルスについてです。
コロナ禍において、医療介護従事者には、一般企業に比べ、かなり慎重な行動制限を求められています。休憩中や食事の時の会話、歓迎会や送別会、いたわり合う時間や機会が全く無い状況となっています。医労連加盟組織で「コロナ禍における対応病院の抑うつリスクと燃え尽き症候群の関連について」約900人を対象にした大規模調査を実施しました。結果、全体の5割強の職員に抑うつ傾向が存在していることが明らかになりました。コロナの影響により、医療従事者は高ストレス・不安な環境にいることが原因であると推測されます。介護労働者にも同様なことが起きていると思われます。医療従事者は感染拡大予防に努めつつ、日常業務に専念しており、対人援助の負担が増大している可能性が伺えます。

大切な労働安全委員会活動
よって、労働安全衛生委員会が大事になってきます。コロナ感染が収束しない中、感染防止の観点から「委員会は中止」や「文書会議」「短時間開催」など委員会の意義が発揮できないことも問題です。そして、国や道へメンタルフォローのための指針や支援を求めていかねばなりません。さらに、賃金が低いことと燃え尽き症候群の相関関係も研究では明らかになっており、緊急的な医療従事者への経済的手当ても重要です。