2017年北海道セミナー開く

記念講演

「労基法70年、労働時間法制からその変遷を考える」

増田幹司氏:旭川大学保健福祉学部コミュニテイ福祉学科・教授

増田教授は労働基準監督官として約30年間、各地の労基署及び本省に勤務しました。その経験から、労働基準法の変遷について概観され、労働時間法制は三つのエポックがあるとしました。
一つは女子保護規定に関するS60年の「改正」です。男子には手をつけず時間外や深夜業務の規制緩和を行いました。
二つ目は法定労働時間を週48時間から40時間に短縮したS62年の「改正」です。ここで、本格的な変形労働時間制が始まりました。  三つ目は変形労働時間制を労使協定で導入できるとした平成10年「改正」です。それまで「就業規則」に明記することなどが必要でしたが、労使協定で可能となり活用が広がりました。また、この「改正」で企画業務型裁量労働制が新たに採用されました。

増田教授は労働時間法制の変遷を淡々と講演しましたが、この間、長時間労働、深夜勤務を含む交替制勤務が拡大し、労働者のいのちと健康への深刻な影響が広がっている事、「男女雇用機会均等法」により女性労働者の男子並みへの組み込みが同様の過重労働を広げる結果となったことなどへの強い思いが伝わる講演でした。

分科会報告

 第1分科会「メンタル・パワハラの職場のとりくみ」

第1分科会では、「メンタル・パワハラの職場のとりくみ」をテーマに24名の参加が   ありました。
佐々木潤弁護士の小講演では、パワハラの実態やパワハラの発生する場面について説明があり、「職場からメンタル不全・パワハラをなくすための方策」について解りやすい講演がされました。参加者からは「どのような時にパワハラが起きるのか解った」と感想が寄せられました。
小講演の後、4本の報告がありました。

◆N病院での新卒看護師パワハラ自死事件について、被災者の母親から労災認定にむけて取り組まれている事例報告がありました。

◆札幌地区労連に寄せられたパワハラ事案と対応について札幌地区労連の吉根清三氏からいじめ・パワハラ相談が急増していて、労働組合は、相談者から労働条件等を詳細に確認、相談者個々に対応し、団体交渉などを活用して解決をはかろうと呼びかけられました。

◆過重労働によるうつ病になった被災者本人から、社会復帰をめざすまでの体験を、労災認定の難しさ、裁判中の苦労、弁護士さんとの共闘などを家族との葛藤を乗り越えてきたことも含めて報告されました。こうした経過を経て、今、苦しんでいる人にむけて「逃げることは正しい」と語られました。

◆大学生協北海道統一労組の棚田正彦氏から衛生委員会を実施する中で職場の実態踏まえ、現場の体制を整備する中で長時間労働が少しずつ改善されてきたこと。
衛生管理者資格取得について教育的視点から組織をあげて取り組まれていること。
職場巡回で危険な箇所や働く環境の改善内容が具体的に報告されました。

  第2分科会「長時間労働・夜勤・交替制勤務と健康」

第2分科会「長時間労働・夜勤・交替制勤務と健康」は14名が参加しました。長時間労働の過労死との因果関係、産業別の長時間労働の課題や対策について交流、意見交換、改善に向け話し合いました。
はじめに長年、過労死問題に取り組んでいる川島亮平医師が、「長時間、夜勤交替制勤務の健康への影響」と題して講演しました。夜勤や長時間労働により、本来の人間らしい生活リズムが崩れること、様々な健康への影響が表われることをデーターで示しました。また、働き方や社会的な要因から健康の歪も生まれる事など、オリジナルの図解を使ってメンタル不全から過労死に結び付くプロセスを解説しました。
講演を受け、参加者からは、継続的な治療が必要でも働き方により、受診できない実態や、過労死の実例から長時間労働による健康被害は思考能力の低下にも結び付くが、そのことを裁判で立証することが難しい事など過労死認定の問題点が出されました。
レポート発表は、医療・福祉・教員の過酷な労働実態が報告され、過労死撲滅、ディセントワークの確立の為には、労働組合を軸にそれらを改善していく、本来の働き方、人類にとって喜びになるよう、政治・社会を変えていく必要があると話し合われました。

  第3分科会「じん肺・アスベスト、職業性疾患の予防と補償」

第3分科会のテーマは「じん肺・アスベスト、職業性疾患の予防と補償」で17人が参加しました。はじめに小講演2つがあり、札幌ワーカーズクリニックの佐藤修二医師は「最近の職業性疾患の事例と特徴」について、全国と北海道の職業性疾患の認定や療養の状況を報告したあと、クリニックを受診した患者の症例(じん肺・石綿疾患・振動障害・上肢障害)を紹介し、石綿肺の患者の掘り起こし、じん肺の管理区分をめぐるとりくみや潜在的に多発している上肢障害の対策の必要性などを指摘しました。 北海道建設アスベスト訴訟弁護団の長野順一弁護士は、国と建材メーカーに賠償を命じた前日(10月27日)の東京高裁での横浜第1陣訴訟の判決など「アスベスト訴訟の到達点と課題」を明らかにし、北海道での第1陣・第2陣訴訟の勝利とともに、国と建材メーカーに救済制度をつくらせる政策形成の課題を強調しました。

 いのラボ 青年・学生の学習と交流

2017年のいの健セミナーでは、「いのラボ」と題して、青年や学生の労働問題を扱うイベントを行いました。参加者は16名で、20代から30代の年齢層が半分以上を占めました。
まず弁護士から「ブラック企業の見分け方」と題して小講演を行った後、参加者が4人づつくらいのグループに分かれてグループワークを行いました。

グループワークの最初のテーマは「私の職場、何が問題?」というもの。回答で圧倒的に多かったのは、長時間労働や休みが取れないことなどでした。これを受けて、次のグループワークでは、「職場の問題、誰になら相談できる?」というテーマ。ここでは、家族、友人、恋人といった回答が多く挙がったものの、ユニオンや弁護士といったワードが挙がるかどうかについては、かなり個人差が見受けられました。

このあと、首都圏青年ユニオンの団体交渉の様子を動画を交えて紹介し、さらにさっぽろ青年ユニオン所属の現役大学生が団体交渉を行ってバイト先の会社に未払い残業代を支払わせた体験を語ってもらい、意見交流しました。

若者を対象とすること、参加型のグループワークで進めることなど、初の試みも多くありましたが、おおむね成功に終わったのではないかと思います。今後、このような取り組みを更に広げられればと思います。
報告:島田 度(弁護士)