流暢性障害(吃音)のある新人看護師の裁判の状況

                                                                                     弁護士 安彦 裕介

流暢性障害(吃音)を負っていた新人看護師の男性が、就職してから僅か約4か月後に自死された事件について、現在、札幌地方裁判所において、労働基準監督署長による遺族補償給付等を支給しない処分の取消を求める裁判を行っています。
この新人看護師の男性は、病院への就職から約3か月後に適応障害を発病され、その約1か月後に自死されました。ご遺族は、男性の発病及び自死について、病院における業務に原因があるとして労災請求を行いましたが、労働基準監督署長はこれを認めず、その後の労働者災害補償保険審査官に対する審査請求、及び労働保険審査会に対する再審査請求においても同じ結論が維持されたため、一昨年の11月に、裁判所への提訴に踏み切ったものです。
男性は、患者に対して吃りのない説明を行うため、事前に指導看護師らに説明の練習を行っていたのですが、重度の流暢性障害(吃音)を有していたことからこれをうまく果たせず、繰り返しの練習を余儀なくされていました。また、この病院の就業規則には、採用後3か月間の試用期間の定めが置かれていましたが、試用期間経過後、同期の新人看護師が本採用される中で、男性は一人だけ試用期間を延長されていました。
これらのことから、裁判では、①重度の流暢性障害(吃音)を有する男性に繰り返しの説明練習を強いることは、障害者への「嫌がらせ、いじめ」に当たるのではないか、②このような状況下で試用期間を延長されたことは、「達成困難なノルマ(業務目標)」を課した上での「重いペナルティ」に当たるのではないか、等のことが問題となっています。
被告(国)は、これらの争点について、男性への説明練習は強制的なものではなかった、あるいは男性に課されていた業務目標は達成困難なものではなかった等と主張して、全面的に争ってきています。
現在は、原告と被告との間で、書面によってお互いの主張を闘わせている段階であり、今後、関係者への尋問や判決へと続く予定です。皆様方のご支援の程、よろしくお願い申し上げます。