振動病の労災申請の動向

  振動病の労災申請の動向と道東勤医協のとりくみ

 2018年北海道セミナーでの道東勤医協の吉岡 猛医師の報告に対して、細川誉至雄医師から概要を紹介する寄稿文が寄せられました。

「振動病」は現在も新規労災認定数は減ることなく推移しているが診断・治療できる医師や医療機関が少なく、診断や労災申請において大きな問題となっている。
昨年10月20日~21日に釧路で行われた北海道セミナーで道東勤医協釧路協立病院整形外科の吉岡 猛医師より、2017年度北海道の振動病新規認定患者のおよそ70%が釧路協立病院での申請である事を伺い、大変驚いた次第である。会員の皆様も振動病についてなじみのない方も多いかと思いますのでその取り組みの一端を紹介したい。

1.振動病(振動障害)とは                                                                                         振動病とは削岩機、チェーンソー等の手持ちの振動具を相当期間使用する事で発症する疾病である。別名白ろう病ともいわれる様に、寒冷で手指が真っ白になる(レイノー症状)こともある。症状としては大きく3つ、①手指の末端の血液循環が悪くなって起きる「末梢循環障害」②手指のしびれや痛みが起こり、熱さ・冷たさ、痛みなどの感覚が鈍くなる「末梢神経障害」③手指、肘の痛みが起こる「骨・関節の障害」の3障害がある。診断では職歴が一番重要で、どのような工具を何処でどの程度使用したかを聞き取り、工具の使用時間も聴取する。そしていつ頃から、どのような症状が出てきたかを詳しく聞き手指や前腕のしびれ、冷えの範囲、レイノー現象の有無、痛みの有無、神経学的所見の有無を診る。振動障害の疑いがあれば精密検査行う。認定基準に合致すれば労災申請を行う、過去には郵便局のオートバイの配達員なども振動病で認定されたこともあるようだ。

2.認定基準と患者数の推移
認定基準は75(昭和50)年に始まり1977(昭和52)年に改訂、現在に至る。1978年の振動障害の新規労災認定患者は259人。またじん肺の有所見率は10%前後であった。最近10年間の振動障害での新規労災補償状況は年間約250~300人とほぼ横ばいで推移し、16年度の療養継続者は5,393人である。業務としては建設業が最も多く、次いで林業、鉱業、製造業と続く。

3.道東勤医協釧路協立病院での取り組み
釧路協立病院では開院以来振動病治療を開始し、07年には太平洋炭鉱閉山後離職者検診を行い30人以上が振動病で新規労災認定された。その後の認定数には変動があるが2017年度北海道の振動障害認定患者96人中67人(約70%)が釧路協立病院での申請である。認定率も76%と驚異的である。全道から受診や紹介があり認定後も治療のため通院先を決め紹介する。紹介先は道央、道東、北網圏、札幌と広範囲に及んでいる。

以上、振動病の現状と道東勤医協の取り組みを紹介したが、振動病はアスベスト疾患と同様に潜在患者は多いと推定される。しかし診断や労災申請、そして治療してもらえる医療機関も少ない。また症状固定として休業補償を打ち切られるなど、行政上の問題も多く、いの健道センターとしても取り組みを強めていく必要があると感じた。

勤医協札幌病院
細川 誉至雄医師  いの健道センター理事長