2018年北海道セミナーIn釧路

「いのちと健康第一」の働き方を!  

 メンタルヘルス・パワハラ、働き方、 労災補償、アスベストなど討論

2018年働く人びとのいのちと健康をまもる北海道セミナーは、10月20~21日、8年ぶりに釧路市で開催し、地元をはじめ十勝・北見・札幌などから94人が参加。講演と報告、討論で学びあい交流しました。

細川誉至雄実行委員長(いの健道センター理事長)は「『働き方改革』が成立しましたが、悪法を職場に持ち込ませず、いのちと健康を大切にする職場づくりが大事です。胆振東部地震でブラックアウトとなり、各地に大きな被害が及びましたが、防災対策、災害時の対応などを見直し、安心できる職場・地域づくりを進めてゆこう」と開会あいさつを行いました。 吉岡猛現地実行委員長(道東勤医協釧路協立病院:医師)は、自らの振動病など労災・職業病の診断・治療の実践を踏まえて、セミナー開催の意義にふれ、人間らしいまともな働き方の実現目指して学び、交流してほしい」と歓迎挨拶を行いました。 続いて、佐藤誠一実行委員会事務局長が「基調報告」を行いました。

 

  記 念 講 演

「みんなで取り組む職場 のメンタルヘルス対策」
     講師 田村 修氏  (勤医協中央病院精神科・リエゾン科医師)

講演はスライドを示しながら3択での選択を聴講者に問いかける、全員参加型を取り入れました。 「心の健康とは」ストレスと上手に付き合うことであり「程よい苦労をしながら、自分らしい人生を送る事」とし、過剰なストレス下で身体的反応→行動の変化と心理的反応→思考の変化に陥るとしました。職場のストレッサーは①仕事の量(長時間労働・過重労働)②仕事の質(専門性・責任・苦情処理などの感情労働)③周囲のサポート(孤立・抱え込み・コミュニケーション不全)などがあるとしました。 厚労省はメンタルヘルス対策の「4つのケア」①セルフケア、②ラインによるケア、③事業場内産業保健スタッフによるケア、④事業外資源によるケアを紹介し、セルフケアのコツとして「自分をよく知る」「ストレスに気づく」「ストレスと上手に付き合う」ことしました。 職場の仲間に①体調不良で休む、②仕事の能率が落ちる、3対人関係のトラブルが起こる、④交通事故・飲酒問題などが起こる場合、メンタル不調が疑われ、うまく「介入」すること、積極的傾聴法について説明しました。また、休職した場合の休職中の対応、復職にあたっての職場の対応について具体例を示してその基本を示しました。 大事なことは「メンタルヘルス対策はみんなのためである」とし、問題の発生は職場環境改善の糸口であり、職場全体に還元されるとし、全員が「お互い様」の関係にあることを理解しあって対処することと指摘しました。

  全 体 会  特別報告(概要)

おさえておきたいパワハラの基礎知識    安彦 裕介氏(弁護士)

セクハラは法的定義があるが、パワハラは定義がない。厚労省は2012年に「円卓会議」の提言、今年3月に「検討会報告」の概念を示している。職場のパワハラの責任を巡る判例を示しながら、使用者の権限と関連しない場合と、する場合での対応の違いについて指摘した。パワハラが起こった場合の対処の留意点、パワハラと労災補償の問題点などを示した。

働く自営業者の実態     岩淵 裕氏(釧路民商)

全商連共済会の「17年度健康診断結果」をもとに、自営業者の有所見率は8割台に上っており、一般労働者の健診結果の5割台を大きく上回る。自殺者は42人で初診から死亡までの期間が短いと厳しい実態を報告。 釧路民商の「経営・暮らし・健康」調査では、健康不安がある58%であるのに対して3割は病院に未受診。理由は「忙しい」「治療費が高い」などで、休みが取れない状態。自営業者のいのちをまもる活動が大切。

私の事故体験と対策     箕浦  邦雄氏(農業)

十勝管内の農家の過去5年間の傷害事故者は平均10%。農家戸数が減っているのに減少しない。自身、多くの事故を体験し、その予防策を考え実践してきた。その具体例をスライドを交えて12項目報告した。

日赤病院のパワハラ自死事件   支援する会・原告

新人看護師が手術室に勤務し、5ケ月半で自死。医師から「病院のお荷物」などと言われ、研修記録では上司等からのパワハラも受けていた。しかし、労災は不支給となり、今年4月、不支給の取り消しを求めて提訴した。地元で組織している「支援する会」の活動と、原告(母親)から「安心して業務が行われることを願う。署名への協力を」と訴えがされた。

 

 

2017年北海道セミナー開く

記念講演

「労基法70年、労働時間法制からその変遷を考える」

増田幹司氏:旭川大学保健福祉学部コミュニテイ福祉学科・教授

増田教授は労働基準監督官として約30年間、各地の労基署及び本省に勤務しました。その経験から、労働基準法の変遷について概観され、労働時間法制は三つのエポックがあるとしました。
一つは女子保護規定に関するS60年の「改正」です。男子には手をつけず時間外や深夜業務の規制緩和を行いました。
二つ目は法定労働時間を週48時間から40時間に短縮したS62年の「改正」です。ここで、本格的な変形労働時間制が始まりました。  三つ目は変形労働時間制を労使協定で導入できるとした平成10年「改正」です。それまで「就業規則」に明記することなどが必要でしたが、労使協定で可能となり活用が広がりました。また、この「改正」で企画業務型裁量労働制が新たに採用されました。

増田教授は労働時間法制の変遷を淡々と講演しましたが、この間、長時間労働、深夜勤務を含む交替制勤務が拡大し、労働者のいのちと健康への深刻な影響が広がっている事、「男女雇用機会均等法」により女性労働者の男子並みへの組み込みが同様の過重労働を広げる結果となったことなどへの強い思いが伝わる講演でした。

分科会報告

 第1分科会「メンタル・パワハラの職場のとりくみ」

第1分科会では、「メンタル・パワハラの職場のとりくみ」をテーマに24名の参加が   ありました。
佐々木潤弁護士の小講演では、パワハラの実態やパワハラの発生する場面について説明があり、「職場からメンタル不全・パワハラをなくすための方策」について解りやすい講演がされました。参加者からは「どのような時にパワハラが起きるのか解った」と感想が寄せられました。
小講演の後、4本の報告がありました。

◆N病院での新卒看護師パワハラ自死事件について、被災者の母親から労災認定にむけて取り組まれている事例報告がありました。

◆札幌地区労連に寄せられたパワハラ事案と対応について札幌地区労連の吉根清三氏からいじめ・パワハラ相談が急増していて、労働組合は、相談者から労働条件等を詳細に確認、相談者個々に対応し、団体交渉などを活用して解決をはかろうと呼びかけられました。

◆過重労働によるうつ病になった被災者本人から、社会復帰をめざすまでの体験を、労災認定の難しさ、裁判中の苦労、弁護士さんとの共闘などを家族との葛藤を乗り越えてきたことも含めて報告されました。こうした経過を経て、今、苦しんでいる人にむけて「逃げることは正しい」と語られました。

◆大学生協北海道統一労組の棚田正彦氏から衛生委員会を実施する中で職場の実態踏まえ、現場の体制を整備する中で長時間労働が少しずつ改善されてきたこと。
衛生管理者資格取得について教育的視点から組織をあげて取り組まれていること。
職場巡回で危険な箇所や働く環境の改善内容が具体的に報告されました。

  第2分科会「長時間労働・夜勤・交替制勤務と健康」

第2分科会「長時間労働・夜勤・交替制勤務と健康」は14名が参加しました。長時間労働の過労死との因果関係、産業別の長時間労働の課題や対策について交流、意見交換、改善に向け話し合いました。
はじめに長年、過労死問題に取り組んでいる川島亮平医師が、「長時間、夜勤交替制勤務の健康への影響」と題して講演しました。夜勤や長時間労働により、本来の人間らしい生活リズムが崩れること、様々な健康への影響が表われることをデーターで示しました。また、働き方や社会的な要因から健康の歪も生まれる事など、オリジナルの図解を使ってメンタル不全から過労死に結び付くプロセスを解説しました。
講演を受け、参加者からは、継続的な治療が必要でも働き方により、受診できない実態や、過労死の実例から長時間労働による健康被害は思考能力の低下にも結び付くが、そのことを裁判で立証することが難しい事など過労死認定の問題点が出されました。
レポート発表は、医療・福祉・教員の過酷な労働実態が報告され、過労死撲滅、ディセントワークの確立の為には、労働組合を軸にそれらを改善していく、本来の働き方、人類にとって喜びになるよう、政治・社会を変えていく必要があると話し合われました。

  第3分科会「じん肺・アスベスト、職業性疾患の予防と補償」

第3分科会のテーマは「じん肺・アスベスト、職業性疾患の予防と補償」で17人が参加しました。はじめに小講演2つがあり、札幌ワーカーズクリニックの佐藤修二医師は「最近の職業性疾患の事例と特徴」について、全国と北海道の職業性疾患の認定や療養の状況を報告したあと、クリニックを受診した患者の症例(じん肺・石綿疾患・振動障害・上肢障害)を紹介し、石綿肺の患者の掘り起こし、じん肺の管理区分をめぐるとりくみや潜在的に多発している上肢障害の対策の必要性などを指摘しました。 北海道建設アスベスト訴訟弁護団の長野順一弁護士は、国と建材メーカーに賠償を命じた前日(10月27日)の東京高裁での横浜第1陣訴訟の判決など「アスベスト訴訟の到達点と課題」を明らかにし、北海道での第1陣・第2陣訴訟の勝利とともに、国と建材メーカーに救済制度をつくらせる政策形成の課題を強調しました。

 いのラボ 青年・学生の学習と交流

2017年のいの健セミナーでは、「いのラボ」と題して、青年や学生の労働問題を扱うイベントを行いました。参加者は16名で、20代から30代の年齢層が半分以上を占めました。
まず弁護士から「ブラック企業の見分け方」と題して小講演を行った後、参加者が4人づつくらいのグループに分かれてグループワークを行いました。

グループワークの最初のテーマは「私の職場、何が問題?」というもの。回答で圧倒的に多かったのは、長時間労働や休みが取れないことなどでした。これを受けて、次のグループワークでは、「職場の問題、誰になら相談できる?」というテーマ。ここでは、家族、友人、恋人といった回答が多く挙がったものの、ユニオンや弁護士といったワードが挙がるかどうかについては、かなり個人差が見受けられました。

このあと、首都圏青年ユニオンの団体交渉の様子を動画を交えて紹介し、さらにさっぽろ青年ユニオン所属の現役大学生が団体交渉を行ってバイト先の会社に未払い残業代を支払わせた体験を語ってもらい、意見交流しました。

若者を対象とすること、参加型のグループワークで進めることなど、初の試みも多くありましたが、おおむね成功に終わったのではないかと思います。今後、このような取り組みを更に広げられればと思います。
報告:島田 度(弁護士)

2016年北海道セミナーin日胆

10月22日・23日に、苫小牧市で「ひろがる格差・すすむ健康破壊=人間らしい働き方をめざして=」をテーマに「2016年働くひとびとのいのちと健康をまもる北海道セミナーin日胆」が開催され、労働をめぐる情勢の学習や労災・職業病・労働環境改善のたたかいなどの交流を行いました。道内各地、苫小牧・室蘭などから働く仲間129人が参加しました。

福地保馬実行委員長(北大名誉教授)から「安倍政権は「働き方改革」という欺瞞に満ちた政策を推し進めようとしています。これは飴のように見せかけた鞭を使って国民をたたくことが目的です。今年は、長年の念願であった日胆地域・苫小牧市での開催となり、やっと希望が実現できました」と開会挨拶がありました。
宮崎有広現地実行委員長(勤医協苫小牧病院院長)から苫小牧の労働者の状況とセミナー開催の意義にふれ、非正規労働者の過酷な健康被害の実例を挙げ「そういう仕事を選んでいるのは自己責任でしょうという風潮は本当に強い。そうしたことを変えていく、人間らしくまともな働き方ができるようにどう近づけていくかということをこの二日間で学んでいきたい」と歓迎の挨拶がありました。

続いて、村井勇太事務局長の基調報告がありました。

川村雅則氏(北海学園大学経済学部教授)による記念講演では、氏の調査研究から具体的な数値、実践例をあげ、格差と貧困、富の再分配、労働契約法をめぐる危険性、官製ワーキングプア、若者を取りまく困難などを解明し、人間らしい働き方の実現や格差をなくすためには労働組合の役割がますます重要となっていると訴えました。長野順一氏(道建設アスベスト訴訟弁護団事務局長)が、2月14日に判決を迎える「道建設アスベスト訴訟のたたかいについて」特別報告を行いました。

柿田泰成氏(さっぽろ青年ユニオン執行委員)から青年を対象としたブラック企業アンケートの結果を踏まえた「青年の労働実態と青年ユニオンの活動」の報告。

野呂一誠氏(勤医協室蘭診療所事務長)から「室蘭市の工業地帯の特徴とばいじん被害そして健診・アスベスト相談活動の報告」。
森下克弘氏(苫小牧ローカルユニオン事務局長)から「労働相談の事例から労働者の実態と生存権が保証される労働環境の実現を目指す取り組み」の報告がありました。(一面から)

セミナー二日目は、分科会と全体会が行われました。

第一分科会「人間らしく働く職場をつくるために~長時間・パワハラ・過労死のない職場づくりをめざして~」は37名が参加。「長時間労働」「パワハラ」「過労死」に係わる事例報告と「過労死相談20事案」「パワハラの労働組合の対応」「高校教員の長時間過密労働と部活動」の報告、そしてフロアからは「自死事件まで生じている過重労働とパワハラの実態、メンタル不全のたたかいの困難さへの対応の質問等が出され3人の助言者から「長時間労働と過労死」「パワハラを考える」「職場で健康障害を防ぐ、健康障害予防の原則」の小講演が行われました。

第二分科会「じん肺・アスベストなど職業性疾患をなくすために」は27名参加。「アスベスト肺がんの労災認定事例」の小講演後に「石綿手帳健診」「建交労労災部会の活動報告」「建交労鉄道本部の石綿健康管理手帳取得のとりくみ」「北星病院における職業病に関わるとりくみ」などの報告を受け意見交流をおこないました。

第三分科会「医療・介護・福祉労働者の「こころ」と「からだ」の健康をまもるために」は16名参加。職場の法令順守度チェックを参加者が行い、職場の仕事量・法令順守を考えるトークセッションを行いました。

閉会の全体会で、島田度副実行委員長がまとめの報告を行いました。ブラック企業の問題は結局はブラック政治経済の問題。その病根にどう立ち向かっていくかが我々の大きな課題。

日胆セミナーでは二桁の20代30代の若者に参加いただき、そこに希望を感じた。初めて苫小牧、日胆地域での開催で、地域の方々に尽力いただいて、たくさんの方が参加した。地方でこういった活動が必要とされていることだと実感した。このセミナーを契機に、職場の日々の実践と個別のたたかいを積み重ねていくことで日本全体の職場をよくしていく活動につなげていただきたい、と訴えました。