勤医協中央病院のアスベストに関する取り組み状況

勤医協中央病院の医師事務業務支援課小川浩司さん(当センター個人会員)から、勤医協中央病院のアスベストに関する取り組みの報告がありましたので掲載します。

2015年7月、厚労省は全国の「がん診療連携拠点病院」へ「石綿による疾病の認定基準」の周知に係る依頼を行いました。北海道労働局の医療監察官が当院へ直接「石綿被害の救済を図る観点から取組を一層進めて頂くように」と要請がありました。

アスベスト労災の実績

2015年度にアスベスト肺癌で労災認定になったのは、全道で年間25件です。その内13件が勤医協中央病院に受療した患者さんでした。
2013年5月から16年度末までに扱った石綿(アスベスト)関連労災認定件数は56件です。内44件がアスベスト肺癌、中皮腫8件、他が4件です。

新聞報道等でご存知のように学校煙突からアスベストが落下、公営住宅でのアスベスト処理が不十分などと報道がされ、アスベスト被害の実態が世間に知られるようになってきました。
肺癌のかかりやすさは、喫煙で4.1~12倍、アスべストだけで1.6~から12・8倍、喫煙がありアスベストのばく露を受けた場合は、最高で53・2倍になります。

事例を紹介します

A氏(64歳・元大工)は自宅近くのK病院で肺癌手術を受け療養していました。しかし療養が長引き、昨年9月、東区へ転居し当院の無料低額診療を希望し受診しました。医師より石綿肺癌と思われると診断を受け、以前、手術したK病院に肺癌手術検体から石綿小体の測定をするように依頼しました。1ケ月後に労災認定基準の4倍を超える約2万3千本/g(乾燥肺)が検出されたと報告が届きました。さっそく、手術した2010年にさかのぼって労災申請を行いました。

早期発見の健診が大切です

石綿健康管理手帳健診については、厚労省より年2回の2月・8月に健診を受けられることになっています。
道内の石綿健康管理手帳取得者約1,400人ほどです。その10%以上を勤医協中央病院で管理しており、今年2月の石綿健康管理手帳健診は130人が勤医協中央病院で健診を受けています。勤医協関係では札幌病院や帯広病院、北見病院に加えて、今年度より勤医協苫小牧病院が受託医療機関になりました。
この間、呼吸器内科・外科医師・アスベスト被害者支援弁護団をはじめ全道での相談会・学習会で石綿アスべスト被害について啓蒙活動を行ってきました。今後も多くの場で石綿アスベスト被害の啓蒙の学習会・相談会を開くことを望みます。

静かな時限爆弾!~アスベストによる健康破壊~

6月12日にNHKクローズアップ現代で『新たなアスベスト被害~調査報告・公営住宅2万戸~』が放映され、大きな反響を呼んでいます。いの健道センター理事長でアスベストの診断、治療に取り組んできた細川誉至雄医師(勤医協札幌病院)のコメントを掲載します。

NHKが6カ月かけて調査したとの事です。全国各地にある公営住宅に暮らしている人たちがアスベストの危険性にさらされていた事が判明、住んでいる人の数は推計では23万人以上にのぼるとの事でした。本来、国や都道府県、自治体が責任をもって調査、分析、被害を止めるための除去対策をとるべきところですが、一向に進まない中、NHKが独自の調査(NHKもすごい組織力ですね)を行って、情報を提供したわけです。

現在もアスベストが使用された建物の約半数は除去されないまま残っています。

アスベストが原因で中皮腫や肺がんで亡くなる人は今や交通事故で亡くなる人より多いと推定されています。アスベストは発がん物質ではありますが、吸い込んですぐ発症するわけではなく発症までに数十年以上かかるため気づかれない事も多く静かな時限爆弾と言われる所以です。

中皮腫で亡くなる人は20年前の3倍以上に増えました。アスベストの約90%は建物の材料として使われ、スレート材や形成板は、一般住宅にも広く使われました。昨年札幌市で小中学校の煙突断熱材破損による給食停止でアスベストがまだ放置されている事が問題になりました。その後「建築物石綿含有建材調査者」により91校を調査し294本に断熱材があり250本の煙突が使用されていた事が明らかになりました。以前の調査では、素人が目視で“ない”と判断し報告したのが原因です。

子供たちが将来アスベストの被害者とならないためにも今できる対策が必要です。増改築を繰り返す建物の石綿調査は専門家による定性と定量分析を行う必要があります。そのためには「調査者」の養成を急ぐと同時に国や、都道府県、自治体は情報を公開し責任をもって対策を講じるべきです。

道建設アスベスト訴訟:札幌地裁判決「国の責任を認め、損害賠償額を増額」

2017年2月14日(火)午後1時10分、札幌地方裁判所民事第1部(内野俊夫裁判長)で、北海道建設アスベスト訴訟(第1陣)の判決言渡しがありました。

地裁判決としては全国で6番目となった今回の判決は、国の責任を認め、建材メーカーの責任を否定するというものでした。

国の責任は、事業者が労働者に防じんマスクを使用させる義務を課すべきであったにもかかわらず、これを怠ったことによるものです。国の責任は、横浜地裁を除くすべての地方裁判所が認めており、もはや揺るぎないものとなったといえます。

建材メーカーの責任は残念ながら認められませんでしたが、判決では、建材メーカーが何らの責任も負わないという結論を取ることには問題があると言わざるを得ないこと、アスベスト被災者を救済するための法改正を行うか、国と建材メーカー等が協力して救済基金のような制度を創設する必要があることにも言及しています。

国だけでなく建材メーカーに対しても、判決によらない早期救済を迫ったものといえるでしょう。

もう一つの重要なポイントは、これまでの他地裁の判決と比較し損害額を大幅に増額したことが挙げられます。アスベスト被災者に対する賠償額は、管理区分に応じて段階的に決定されますが、今回の判決は、管理区分によって300~600万円も増額しました。 アスベストによる健康被害が不可逆的なものであり、早期解決の必要性を示したものといえるでしょう。

アスベスト労災不支給決定を労災再審査請求で逆転決定!

Mさん(男・64歳)は、アスベスト肺がんで業務外認定となり、審査請求でも不支給決定でしたが、再審査請求で労災認定を勝ち取りとりました。
事件を担当した吉田玲英氏(弁護士)に、決定までの経過とアスベスト労災認定の問題についてお聞きしました。

労災不支給決定が再審査請求で取り消された事案

Mさんは、労基署の推定によれば、昭和56年4月から平成13年5月までの期間中、12年3ヶ月間、とび職や解体工として、複数の建設事業において石綿ばく露作業に従事していた労働者です。Mさんは、平成25年7月、肺がんと診断され、その後、入退院を繰り返しながら療養を続けています。平成26年3月に労災による休業補償の請求を行いましたが、不支給となりました。不支給の理由は、乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が認定基準の5千本に満たない3,501本であるため、石綿ばく露作業によって肺がんが発症したとは認められないとしたものでした。

アスベスト労災認定基準の問題点

Mさんの事案で最大の問題となったのは、胸膜プラークが認められず、しかも乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が5千本に満たなかった点です。

厚生労働省が取りまとめた、『石綿による疾病の認定基準に関する検討会』の報告によると、乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が1千本以上あれば、職業ばく露が疑われるレベルとのことです。そして、Mさんの石綿ばく露作業歴は12年3か月もあったにもかかわらず5千本に満たないから、という理由でMさんの労災申請は却下されました。

Mさんは直ちに審査請求を申し立てましたが、同じ理由で、審査請求も認められませんでした。
これはまさに、石綿による肺がんの労災認定基準の不当性を示すものといえます。5千本以上という要件は平成24年に新たに付け加えられたものですが、それ以前は、石綿ばく露作業歴が10年以上あり、乾燥肺中に石綿小体が存在すれば、石綿小体の本数にかかわらず労災が認定されていました。

平成24年に5千本以上という新たな要件が付け加えられたことにより、労災認定基準が改悪されたのです。Mさんは、平成24年より以前に労災申請をしていれば、労災認定を受けられたにもかかわらず、肺がんを発症した時期が遅かったために労災認定を受けることができませんでした。このような労災認定基準の改悪は、決して許されるべきものではありません。

逆転認定のポイントと今後の課題

再審査請求を申し立てた後で、Mさんが肺がんで手術した際のビデオを入手することができ、医師の診断を受けたところビデオ映像に薄い胸膜プラークが見つかりました。これにより、平成28年6月15日、Mさんに対する労災審査請求の不支給決定が取り消されるという逆転裁決を勝ち取ることができました。

Mさんの場合は、手術中のビデオ映像から胸膜プラークが見つかったことにより逆転裁決となりましたが、平成24年に改悪された労災認定基準の問題は依然として残ったままとなっており、これが今後の課題といえるでしょう。

アスベスト製品の規制をせずに放置しアスベスト被害を拡大させた国は、アスベスト被災者を救済する責任があります。労災が不支給となったとしても、このように労災審査請求や再審査請求で逆転できる場合も少なくありません。不当な対応にもあきらめず、是非ご相談ください!

  1. 弁護士 吉田 玲英(八十島法律事務所)

アスベスト健康被害を市民に知らせて 初めて「室蘭市と懇談会」を開催

室蘭アスベスト健康被害相談会を開催(2016年6月18日)に先立って、初めて室蘭市との懇談会を2016年5月23日に行いました。
室蘭市の産業振興課・健康推進課・市立病院の課長ら4名とアスベスト健康被害現地実行委員会(代表:星山栄)6名が室蘭市役所内で懇談しました。
①室蘭地域でのアスベスト健康被害の現状を理解、
②市民の健康づくりの立場で啓蒙活動や健康管理手帳の取得など、相談会をきっかけに広める、
③行政や公的病院の役割や取り組みの具体化を要請しました。
参加者から、新日鉄など健康管理手帳の申請に企業の協力が得られにくく取得が難しいことや建設業で被害実態に比して申請が少ないことなど現状を訴え行政や公的病院の役割を発揮するよう要請しました。
室蘭市から「昨年4月に『がん対策推進条例』を制定した。
がんの早期発見に結びつける取り組みで協力したい。市立病院では、呼吸器科の医師体制が厳しく専門医資格取得と研修に努力する。今後も市民の皆さんと健康づくりに努力したい。」と回答がありました。

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北海道建設アスベスト第2陣訴訟 口頭弁論開かれる

2016年5月26日(木)に、北海道建設アスベスト訴訟第2陣の口頭弁論が、札幌地方裁判所で開かれました。
意見陳述に立った長野順一弁護士は、企業の共同不法行為について、石綿含有建材を製造販売したすべての企業を共同不法行為者とし約40社に対して全部連帯責任を追及しました。また、原告の作業実態から暴露した可能性の高い石綿含有建材ないし製品を限定し、共同不法行為者の範囲を各原告ごとに追及すること。

原告らが暴露した可能性の高い石綿含有建材ないし製品について、被告企業らが使用した石綿の量や石綿建材のシェアを調査した結果に基づいて、被告企業らは少なくとも分割責任を負うよう主張しました。今後は、国の規制権限不行使を含め論証し追及していきます。
続いて意見陳述に立った中村憲昭弁護士は、白石綿(クリソタイル)の毒性や危険性、中皮腫をはじめとした石綿関連疾患の引き起こす要因であることを知りえた国と建材製造販売企業の責任は明らかであり救済と賠償を求めました。裁判所に対しては一刻も早い救済を求めました。
弁護団によると、WEBを見て、知人・友人の紹介や労災療養中の方などの問い合わせが多くなっており、新たに原告に加わる方が増えています。第二陣原告団は、追加提訴を予定しています。

トンネルじん肺根絶第5陣北海道訴訟 第1回口頭弁論が開かれる

全国トンネルじん肺根絶第5陣は、2016年3月31日に全国7地裁に対し119人の患者が提訴しました。
2016年5月24日に札幌地裁では全国に先立ち北海道訴訟の第1回口頭弁論が開催されました。
原告を代表し意見陳述に立った堀彰原告団長は、『1990年の道南じん肺訴訟に立ちあがった先輩たちは「じん肺で苦しむのは自分たちで終わりにしてほしい」と7年をかけて解決した。
2007年には当時の安倍首相は「じん肺患者発生防止を万全におこなって二度とじん肺が起こらないよう決意した」といっていたが、その後もじん肺患者は増え続けている。すでにじん肺訴訟は多くの判決で国と企業の責任は確定している。』として訴訟の早期の解決と「トンネルじん肺基金」の創設にたいし裁判所の尽力を求めました。
また、北海道新幹線のトンネル工事で「一人のじん肺患者も出さない」ように国や鉄道運輸機構、元請け企業に求めました。弁論後の報告集会では、「あやまれ、つぐなえなくせじん肺」をたたかいで勝ち取ろうと川村弁護団長、堀原告団長、があいさつした後、森国道建交労委員長が「早期解決をめざし引き続き闘いを強めよう」と訴えました。

熊本震災・アスベスト対策で提言

北海道建設アスベスト原告団・弁護団など13団体は、厚生労働大臣、環境大臣、国土交通大臣、総務大臣に対し「熊本地震にかかるアスベスト被害防止に関する緊急提言・将来にアスベスト被害を出さないために」を、提言しました。
提言要旨

①住民への周知徹底を行うこと。「アスベスト含有建材除去についての注意事項及びアスベストの有害性、危険性を記載したパンフレット」を作成し、すべての被災者、作業者、ボランティアに配布すること。
②(半)倒壊した建物から飛散するアスベスト粉じんへの「ばく露防止対策」として、国自らが、建物の倒壊現場や解体現場で作業する人たちに向けた個人ばく露対策として呼吸用保護具(少なくともRL2又はRS2仕様のマスク)を配布すること。
③国によるアスベスト使用建物及びアスベスト飛散状況の調査の実施。
④「住民、作業者、ボランティア等」アスベストばく露が懸念される人たちの登録制度を導入すること。