2019年なくせじん肺全国キャラバン

 国にアスベスト被害根絶と基金創設を求めて全国で取り組まれた「第30回なくせじん肺全国キャラバン」(9・30~10・24)の終結集会が10月23日、東京都内で開かれ、24日は、厚労省と交渉。アスベストアナライザー(現場で非破壊で即時アスベスト分析が可能な計測器)を全国的に普及するよう強く要請しました。

 北海道の出発集会

 10月3日、札幌で行われた「北海道キャラバン」の出発集会では、三つの訴訟報告がありました。トンネルじん肺根絶訴訟弁護団の川村俊紀団長は「第6陣訴訟は来年4月の和解成立をめざしています。これまで23年にわたる裁判で2千5百人の解決をみた。国の責任を認めた5つの判決をもとに合意書を結ぶなどの成果をあげてきました。裁判によらない解決のために『基金』創設を求めている」と報告しました。
建設アスベスト訴訟弁護団の長野順一事務局長は「全国的には4つの高裁判決で、国、メーカーの責任を認めさせてきた。11月には九州でも高裁判決が出された。来年には最高裁の判断が示されまる。札幌の訴訟でも国とメーカーの責任を認めさせ、裁判によらない救済基金の実現をめざす」と強調しました。
石炭じん肺訴訟弁護団の増谷康博事務局長は「第5陣まで1千8百人が国と和解した。残る原告についても来年6月までに解決できる見通しだ。企業側の不当な主張を許さないたたかいを強めなければならない」と訴えました。

 労働局・労基署・自治体などに要請

 3日午後から、道庁への要請行動を行い、トンネル工事での8時間労働制、アスベストアナライザーの導入を求めました。17日の道労働局等への要請では、北海道労働局が保有しているアスベストアナライザーについて、「札幌近隣を中心に100ケ所で検査を実施し、かなりの確率でアスベストが検出された」との報告がされました。各監督署に配置するよう本庁に要望することを求めました。
10月9日と10日に道内11の労働基準監督署、同時に初めて各自治体に「アスベスト被害の救済制度の広報と中皮腫で亡くなった市民の遺族への資料の直接送付」などを求めました。「建交労道本闘争本部ニュース」より転載

   アスベストアナライザーの配置を

携帯用のアスベスト分析装置で、現場で対象物を破壊せずに器械を当てるだけで、約10秒で6種類のアスベスト鉱物の有無の結果を出します。1台720万円以上ですが、各地域に配置することで被害対策、除去対策が進みます。道内では北海道労働局と札幌市に配置済みです。建交労北海道本部は各労基署、道内の主要な自治体への配置を求めています。

労災に関する二つの発言

8月24日開催した、いの健センター第7回通常理事会での発言を紹介します。

 2018年度の労災認定は176件

 俵 正好さん(建交労北海道本部)

   建交労では冬場を中心に、健康や退職金制度などの関する「相談会」を行っています。
今年の冬は8地域31会場で行いました。チラシを新聞折込に入れたりしていますのでお金はかかります。いろんな相談があります。今年の函館会場にはトンネルの現場で働いてきた労働者が、体調不良になり退職し、会社に健康保険の手当支給をお願いしたが駄目で、相談に来ました。組合と一緒に労災申請することとし準備しています。
この取り組みは各自治体にも協力を呼び掛けています。「建交労」と言っても知らない人もいるため、自治体の「広報」に掲載してもらっています。また、地域の医療機関から会場をお借りするなどの対応も進めています。
この1年間の労災認定件数は176件でした。内訳は振動障害99件、じん肺16件、アスベスト1件、騒音による難聴36件、その他1件、遺族補償23件(じん肺22件、アスベスト1件)でした。振動障害は道労働局の統計では100件ですので、逆に言うといかに労災として診断する医師が少ないのかということです。
業務外のケースは7件でしたが、すべて、じん肺の遺族補償のケースでした。高齢のじん肺患者が誤嚥性肺炎で死亡した件で遺族が労災申請したケースでは、労基署が窓口で受け付けないという事例が生じています。こうした動きに対してもきちんと対応しなければと思っています。

 じん肺・アスベストの相談は408件

小川 浩司(勤医協中央病院)

     勤医協中央病院での、じん肺・アスベストへの取り組みについて報告します。
2018年度は相談件数が408件でした。じん肺の労災申請は18件、アスベストは22件でした。認定は14件、不支給は1件で他は審査中です。
このうち、病理解剖の結果、遺族補償を申請したケースが4件ありました。、
学校の先生のアスベスト事例がありました。チョークや昔の印刷機などで石綿の暴露を受けたものと思いますが、「公務災害」申請では学校長が申請者となるため、当時の証明ができないと拒否されています。やむを得なく「石綿救済法」への申請を行っています。こうした労働起因が証明できないアスベストの被災者に対しては、環境再生保全機構による「石綿救済法」の申請を行うことができます。昨年は16件申請し、うち10件が認められています。

3年間でアスベスト労災41件

  勤医協中央病院のとりくみ

勤医協中央病院は、石綿健康管理手帳健診の受託医療機関です。「石綿手帳」所持者は職場でアスベスト暴露し呼吸器疾患にり患した人に交付され、年2回の検診を受けることができます。勤医協中央病院では2018年は延べ280人が受検しました。

アスベスト関連疾患(肺がん、中脾腫、胸膜肥厚・良性胸水)の患者は2016年4月~2019年3月までの3年間で、60人でした。このうち47人が労災申請し、認定が41人、現在申請中2人、不支給決定が4件でした。

Aさん(60歳代・男)は定年まで43年間、サッシ工として働き、16年9月に他医院で異常陰影を確認され、17年8月当院で胸腔鏡下肺部分切除術施行し、手術検体より石綿小体測定を実施し47,389本/g(乾燥肺)を検出。原発性肺がんの労災認定基準である「胸膜プラークに石綿粉塵暴露歴10年以上」それに加え石綿小体測定5,000本/g乾燥肺をクリアしていることを確認し11月、労災申請を行い、18年3月認定となりました。

業務上の要件を満たさなかった場合、環境省による「石綿救済法」の基準を満たせば医療費や療養手当てが支給されます。当院では3年間で6件が該当となりました。労災と合わせて47件が補償を受けています。
わが国では1960年~90年代までアスベストが使用されていました。30年~40年を経過して症状が現れると言われており、呼吸器疾患の場合、アスベストを疑い、精査することが必要です。

勤医協中央病院・医事課  小川 浩司

勤医協中央病院のアスベストに関する取り組み状況

勤医協中央病院の医師事務業務支援課小川浩司さん(当センター個人会員)から、勤医協中央病院のアスベストに関する取り組みの報告がありましたので掲載します。

2015年7月、厚労省は全国の「がん診療連携拠点病院」へ「石綿による疾病の認定基準」の周知に係る依頼を行いました。北海道労働局の医療監察官が当院へ直接「石綿被害の救済を図る観点から取組を一層進めて頂くように」と要請がありました。

アスベスト労災の実績

2015年度にアスベスト肺癌で労災認定になったのは、全道で年間25件です。その内13件が勤医協中央病院に受療した患者さんでした。
2013年5月から16年度末までに扱った石綿(アスベスト)関連労災認定件数は56件です。内44件がアスベスト肺癌、中皮腫8件、他が4件です。

新聞報道等でご存知のように学校煙突からアスベストが落下、公営住宅でのアスベスト処理が不十分などと報道がされ、アスベスト被害の実態が世間に知られるようになってきました。
肺癌のかかりやすさは、喫煙で4.1~12倍、アスべストだけで1.6~から12・8倍、喫煙がありアスベストのばく露を受けた場合は、最高で53・2倍になります。

事例を紹介します

A氏(64歳・元大工)は自宅近くのK病院で肺癌手術を受け療養していました。しかし療養が長引き、昨年9月、東区へ転居し当院の無料低額診療を希望し受診しました。医師より石綿肺癌と思われると診断を受け、以前、手術したK病院に肺癌手術検体から石綿小体の測定をするように依頼しました。1ケ月後に労災認定基準の4倍を超える約2万3千本/g(乾燥肺)が検出されたと報告が届きました。さっそく、手術した2010年にさかのぼって労災申請を行いました。

早期発見の健診が大切です

石綿健康管理手帳健診については、厚労省より年2回の2月・8月に健診を受けられることになっています。
道内の石綿健康管理手帳取得者約1,400人ほどです。その10%以上を勤医協中央病院で管理しており、今年2月の石綿健康管理手帳健診は130人が勤医協中央病院で健診を受けています。勤医協関係では札幌病院や帯広病院、北見病院に加えて、今年度より勤医協苫小牧病院が受託医療機関になりました。
この間、呼吸器内科・外科医師・アスベスト被害者支援弁護団をはじめ全道での相談会・学習会で石綿アスべスト被害について啓蒙活動を行ってきました。今後も多くの場で石綿アスベスト被害の啓蒙の学習会・相談会を開くことを望みます。

静かな時限爆弾!~アスベストによる健康破壊~

6月12日にNHKクローズアップ現代で『新たなアスベスト被害~調査報告・公営住宅2万戸~』が放映され、大きな反響を呼んでいます。いの健道センター理事長でアスベストの診断、治療に取り組んできた細川誉至雄医師(勤医協札幌病院)のコメントを掲載します。

NHKが6カ月かけて調査したとの事です。全国各地にある公営住宅に暮らしている人たちがアスベストの危険性にさらされていた事が判明、住んでいる人の数は推計では23万人以上にのぼるとの事でした。本来、国や都道府県、自治体が責任をもって調査、分析、被害を止めるための除去対策をとるべきところですが、一向に進まない中、NHKが独自の調査(NHKもすごい組織力ですね)を行って、情報を提供したわけです。

現在もアスベストが使用された建物の約半数は除去されないまま残っています。

アスベストが原因で中皮腫や肺がんで亡くなる人は今や交通事故で亡くなる人より多いと推定されています。アスベストは発がん物質ではありますが、吸い込んですぐ発症するわけではなく発症までに数十年以上かかるため気づかれない事も多く静かな時限爆弾と言われる所以です。

中皮腫で亡くなる人は20年前の3倍以上に増えました。アスベストの約90%は建物の材料として使われ、スレート材や形成板は、一般住宅にも広く使われました。昨年札幌市で小中学校の煙突断熱材破損による給食停止でアスベストがまだ放置されている事が問題になりました。その後「建築物石綿含有建材調査者」により91校を調査し294本に断熱材があり250本の煙突が使用されていた事が明らかになりました。以前の調査では、素人が目視で“ない”と判断し報告したのが原因です。

子供たちが将来アスベストの被害者とならないためにも今できる対策が必要です。増改築を繰り返す建物の石綿調査は専門家による定性と定量分析を行う必要があります。そのためには「調査者」の養成を急ぐと同時に国や、都道府県、自治体は情報を公開し責任をもって対策を講じるべきです。

アスベスト労災不支給決定を労災再審査請求で逆転決定!

Mさん(男・64歳)は、アスベスト肺がんで業務外認定となり、審査請求でも不支給決定でしたが、再審査請求で労災認定を勝ち取りとりました。
事件を担当した吉田玲英氏(弁護士)に、決定までの経過とアスベスト労災認定の問題についてお聞きしました。

労災不支給決定が再審査請求で取り消された事案

Mさんは、労基署の推定によれば、昭和56年4月から平成13年5月までの期間中、12年3ヶ月間、とび職や解体工として、複数の建設事業において石綿ばく露作業に従事していた労働者です。Mさんは、平成25年7月、肺がんと診断され、その後、入退院を繰り返しながら療養を続けています。平成26年3月に労災による休業補償の請求を行いましたが、不支給となりました。不支給の理由は、乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が認定基準の5千本に満たない3,501本であるため、石綿ばく露作業によって肺がんが発症したとは認められないとしたものでした。

アスベスト労災認定基準の問題点

Mさんの事案で最大の問題となったのは、胸膜プラークが認められず、しかも乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が5千本に満たなかった点です。

厚生労働省が取りまとめた、『石綿による疾病の認定基準に関する検討会』の報告によると、乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が1千本以上あれば、職業ばく露が疑われるレベルとのことです。そして、Mさんの石綿ばく露作業歴は12年3か月もあったにもかかわらず5千本に満たないから、という理由でMさんの労災申請は却下されました。

Mさんは直ちに審査請求を申し立てましたが、同じ理由で、審査請求も認められませんでした。
これはまさに、石綿による肺がんの労災認定基準の不当性を示すものといえます。5千本以上という要件は平成24年に新たに付け加えられたものですが、それ以前は、石綿ばく露作業歴が10年以上あり、乾燥肺中に石綿小体が存在すれば、石綿小体の本数にかかわらず労災が認定されていました。

平成24年に5千本以上という新たな要件が付け加えられたことにより、労災認定基準が改悪されたのです。Mさんは、平成24年より以前に労災申請をしていれば、労災認定を受けられたにもかかわらず、肺がんを発症した時期が遅かったために労災認定を受けることができませんでした。このような労災認定基準の改悪は、決して許されるべきものではありません。

逆転認定のポイントと今後の課題

再審査請求を申し立てた後で、Mさんが肺がんで手術した際のビデオを入手することができ、医師の診断を受けたところビデオ映像に薄い胸膜プラークが見つかりました。これにより、平成28年6月15日、Mさんに対する労災審査請求の不支給決定が取り消されるという逆転裁決を勝ち取ることができました。

Mさんの場合は、手術中のビデオ映像から胸膜プラークが見つかったことにより逆転裁決となりましたが、平成24年に改悪された労災認定基準の問題は依然として残ったままとなっており、これが今後の課題といえるでしょう。

アスベスト製品の規制をせずに放置しアスベスト被害を拡大させた国は、アスベスト被災者を救済する責任があります。労災が不支給となったとしても、このように労災審査請求や再審査請求で逆転できる場合も少なくありません。不当な対応にもあきらめず、是非ご相談ください!

  1. 弁護士 吉田 玲英(八十島法律事務所)

熊本震災・アスベスト対策で提言

北海道建設アスベスト原告団・弁護団など13団体は、厚生労働大臣、環境大臣、国土交通大臣、総務大臣に対し「熊本地震にかかるアスベスト被害防止に関する緊急提言・将来にアスベスト被害を出さないために」を、提言しました。
提言要旨

①住民への周知徹底を行うこと。「アスベスト含有建材除去についての注意事項及びアスベストの有害性、危険性を記載したパンフレット」を作成し、すべての被災者、作業者、ボランティアに配布すること。
②(半)倒壊した建物から飛散するアスベスト粉じんへの「ばく露防止対策」として、国自らが、建物の倒壊現場や解体現場で作業する人たちに向けた個人ばく露対策として呼吸用保護具(少なくともRL2又はRS2仕様のマスク)を配布すること。
③国によるアスベスト使用建物及びアスベスト飛散状況の調査の実施。
④「住民、作業者、ボランティア等」アスベストばく露が懸念される人たちの登録制度を導入すること。