裁判で係争中に国が労災認定:24時間勤務のビルメン労働者が勝訴

24時間連続勤務のビルメンテナンスの仕事に従事していたSさん(45歳)は、長時間にわたる変則勤務により、2013年10月うつ病となりました。翌年3月労災申請しましたが不支給となり、2016年8月、国を相手に行政訴訟を提訴しました。

第2回期日前の3月初旬に国から「処分の『うち直し』を検討」と連絡があり、以後、原告と当該労基署で話し合いを行ってきました。

原告は、「24時間連続勤務中は仮眠が取れない状態であり、『手待ち時間』ではなく労働時間」と出張していました。国は裁判途上に再度現場労働者の聞き取りを行った結果、S氏の発病1ヶ月前の時間外労働が174時間46分あることを確認し、160時間を超える「特別の出来事」に該当するとして労災認定し、裁判の中止を判断しました。

原告は弁護団と協議し、6月13日それを受け入れることを決め裁判の取り下げとなりました。労災申請した2013年10月から14年2月までの休業・療養補償給付金の支給が決定しました。現在、14年3月以後の労災申請を行い、継続した認定をめざしています。

Sさんは「労災が認められず、体調不良のまま勤務に就き、結局病状は悪化してしまいました。最後は認められましたが、10年間にわたる体調不良と長い闘病生活を続けています。同じような勤務に就いているビルメン労働者の待遇改善につながればいいと思っています」と述べています。

ビルメン労働者の労災認定、瀨戸悠介弁護士の報告です。

国が、訴訟中に札幌中央労働基準監督署が出した療養補償給付の不支給決定取消処分をいわゆる「打ち直し」をすることで支給決定をし直した事例

異例の「うち直し」で勝訴

ビルメンテナンスの労働者Sさんが2016年8月末に労災不支給決定について取り消しを求めて提訴した裁判が平成29年3月末、国自らが不支給決定を変更し、支給決定とする「打ち直し」をすることで解決しました。

3日に1度の24時間勤務

Sさんは、平成6年8月から、札幌所在のビル管理会社に勤めており、平成19年6月からは新聞工場の設備保守管理、機器運転監視等を行っていました。Sさんが管理をすることになった新聞工場は、平成19年7月から稼働したばかりで、Sさん以外に空調機器を操作できる同僚もいないため、Sさんは一人で湿度や温度等の情報採集や機器への情報の打ち込みをせざるを得ない状況が続きました。

Sさんの勤務時間は3日に1度の24時間勤務であり、仮眠時間は5時間となっていましたが、仮眠場所はパーテーションで仕切った程度で、室内の音は普通に聞こえる状況でした。しかも、毎日午前2時に必ず電力異常の警報が鳴り、午前4時ころからは輪転機のメンテナンスを行う業者が新聞工場を来訪することが頻繁にあるなど、警報音や対応のせいで仮眠もとれない状況でした。

労災申請と不支給決定

Sさんは上記の過酷な労働環境によって、平成20年7月、うつ病と診断されたため、会社に対し転勤願いと有給申請をしました。同年9月、Sさんは別のビル管理業務となりましたが、平成25年9月頃には月約174時間の残業をすることとなり、うつ病の症状が増悪したため、同年10月2日、病院に入院することになりました。Sさんは、このうつ病は労災だと考えて労災請求をしましたが不支給決定となり、審査請求、再審査請求でもこの判断が覆ることはありませんでした。

不払い残業代は認定

この間、Sさんは、平成27年2月2日、札幌中央労働基準監督署に対し、平成25年2月分から平成27年1月分の未払残業代の支払いを求める申告を行いました。すると、平成27年2月13日、札幌中央労基署は、コールセンターでの仮眠時間及び休憩時間は、全て労働時間だと認め、会社に対して是正勧告を出したのです。しかし、審査請求、再審査請求ではこの事実は無視され、平成28年2月24日、労災不支給が決まりました。Sさんは悔しい思いを捨てきれず、8月末に取消訴訟を提訴したのです。

3月、「処分の打ち直し」

その後、平成29年3月初旬、国の代理人から連絡があり「国が『処分の打ち直し』を検討している」と伝えられました。平成29年3月24日、札幌中央労基署副所長その外2名がSさんの下を訪れ、不完全な調査で不支給決定をしたことを謝罪しました。そして、同年4月4日、支給決定が出されたため、訴訟は取り下げにより終了しました。

「あきらめない」Sさんの粘りが勝利を招いた

国が訴訟中に処分の変更を行うことはとても珍しく、私を含めた弁護団でもとても驚く結果となりました。やはりSさん自身が審査請求や再審査請求の棄却の結果に諦めず、労基署に未払い賃金を申し出て是正勧告を勝ち取ったことで、国もこれ以上は戦えないと白旗を上げ、支給処分をしたのではないかと思います。 私自身もこの事件を通じてあきらめないことの大事さを教えていただけました。まだまだ解決していない点も残っておりますので、今後もSさんのために支援を続けていく所存です。

弁護士 瀨戸悠介(たかさき法律事務所)

主任研究員のうつ病:研究所は安全管理義務違反認めよ

K氏(男・46歳)は、(株)北海道21世紀総合研究所に主任研究員として勤務していました。10年目が経過した頃、「産業廃棄物・リサイクル」関係の調査業務が増加し2005年10月以降は時間外労働が100時間を超える過重労働が続き、2006年1月、うつ病を発症しました。

その後、給与が半減し体調不良で休職を求めても認められず、2008年からは退職勧告を受け、いじめ・嫌がらせが強まりました。不正常な勤務で治療を続けていましたが、札幌ローカルユニオン「結」に加盟し、いの健道センターとも相談して2013年8月労災申請し、翌年1月発病時にさかのぼって労災の休業・療養補償が認められました。

しかし、研究所はうつ病の発症は業務と無関係とし、労組が団体交渉で指摘しても態度が変わらないため、2016年1月安全配慮義務違反と労務管理をせず、長時間労働やうつ病にり患した労働者を働かせ続けた故意または過失の不法行為があるとして、「研究所」と取締役で上司のH氏に対する損害賠償請求を札幌地裁に提訴しました。

以降、2016年7月まで5回の口頭弁論期日が行われ、その後は弁論準備(ラウンド)で、4月25日は8回目の弁論準備が行われました。

この間、裁判所の意向により原告から「和解案」を提出しましたが、被告は「解決金に疑義がある」などとして、結論の先延ばしをはかっているような対応に終始しています。

うどんチェーン店・店長の民事訴訟「和解」

2016年3月、過重労働で労災認定を受けていたうどん店の店長Aさんは、弁護士と相談して昨年年末に民事訴訟を提訴しましたが、先月和解しました。担当されたブラック企業被害対策弁護団北海道支部の弁護士からの報告を掲載します

大手うどんチェーン店に店長として勤務していた札幌在住のAさんが2016年末に会社を相手に安全配慮義務違反による損害賠償請求を求めて提訴した裁判が、第1回期日前に和解で解決しました。

Aさんが2012年に入社した大手うどんチェーン店では、店長が複数店舗を担当するとされており、Aさんも3店舗の店長を兼任させられました。Aさんは、20年近く飲食業界におり店長経験も豊富なベテランでしたが、流石にこのような勤務形態は初めてで、14日間連続勤務、月110時間超の残業を含む過酷な労働を経て、入社後わずか4ヶ月でうつ病を発症し入院することになりました。

Aさんは、うつ病が小康状態になったあと2015年に労災申請を行いました。会社の非協力的な対応もあり当初は難航しましたが、いの健センターの助けもあり、2016年に無事労災支給決定がなされました。これを踏まえて、会社の安全配慮義務違反を問うために提訴したのが冒頭で述べた裁判です。

Aさんとしては、長時間労働に対する社会的な注目が高まっている情勢でもあり、裁判を通じて会社の社会的責任を問いたい想いもありましたが、未だ療養中であり、裁判を行うことに医師から消極的な意見があったことや、会社側からAさんが納得しうるだけの和解案が提示されたことから、和解に踏み切りました。

諸般の事情により、和解内容や交渉経過について述べることはできませんが、今後、会社が再発防止のための労働安全衛生活動を行うことをAさんは確信しています。

また、この裁判を提起するにあたりワタミ過労自死事件のご遺族が設立した「望基金」からご支援を頂きました。このご支援を頂いたことによりAさんはとても励まされましたし、「望基金」の支援を得た事件であると会社側が認識したことが早期和解に繋がったようにも思います。

和解成立を受け、Aさんは寛解を目指し職場復帰に向けた努力を開始しています。

この事件を担当したブラック企業被害対策弁護団北海道支部としてもご本人にとって良い解決がなされたことで職責を果たすことができたことに感謝するとともに、今後もこのような被害者の救済にあたっていく所存です。

ブラック企業被害対策
弁護団北海道支部
弁護士 中島 哲

24時間勤務のビルメン労働者労災不支給の取り消し求め提訴

24時間連続勤務のビルメンテナンスの仕事に従事していたT・S氏(45歳)は、長時間にわたる変則勤務及び過剰勤務により、2013年10月うつ病で入院しました。翌年3月労災申請しましたが不支給決定となり、審査請求、再審査請求も棄却されました。「裁決書」では、ことごとく会社側の証言を基に判断し、「請求人の勤務態様は手持ち時間が多く、労働密度は決して高いとは言えない」としています。

 

T・S氏は、「現場の実態を見ない不当な決定」と憤り、妻とともに、ビルメンテナンス労働者の劣悪な労働実態を改善し、健康が守られる勤務条件にすることをめざして、国を相手に、労災不支給決定の取り消しを求める行政訴訟を行うこととし、先月、札幌地裁に提訴しました。いの健道センターでは同業の仲間をはじめ、多くの皆さんの支援を呼びかけています。

「公務災害」を考える学習会ひらく

2016年9月10日(土)午後2時~5時まで、札幌市内で「『公務災害』を考える学習会」を行いました。この学習会は、公立学校の先生が生徒指導問題で、不当な扱いを受け自死した事件で、遺族と元同僚が民間の労働者の「労災」に当たる「公務災害」を申請するにあたって、制度の内容を知るために行われました。「公務災害の当事者及びその家族を支える会」と「いの健道センター」が共催しました。

東京過労死を考える家族の会の工藤祥子さんは、「夫(教員)の過労死認定を得るまで」をテーマに自らの体験を報告しました。

中学校教員だった工藤さんの夫は、生徒指導専任とサッカー部顧問などを受け持ち、休日もない過重労働に巻き込まれ、2007年6月、くも膜下出血で急逝しました。享年40歳でした。

工藤さんは、過重労働が原因に違いないと、公務災害の申請を決意し同僚教員、校長の後押しも得て、膨大な申請書類をまとめ、翌年8月、地方公務員災害補償基金県支部に申請しました。しかし、2010年5月に「公務外」とされました。工藤さんにとって「夫が2度殺された」との悲痛の思いでした。

早速、審査請求を行い、「公務上」と認められたのは2年半後の2013年1月でした。夫が亡くなって5年半が経過していました。工藤さんは、校長先生までが過重労働と認めているのに、公務上を認めない「公務災害」制度の問題点を指摘しました。「何度もあきらめそうになりましたが、粘り強くたたかい続けたことで良い結果を得ることができました」と語りました。

続いて、松丸正弁護士(過労死弁護団全国連絡会議代表幹事)が、公務災害と労災制度の違いについて、労災は直接遺族補償を請求するが、公務災害はまず、「公務上」を認めてもらう請求を行い、その後、遺族補償請求となること、申請は、

①所属長(校長ら)が調査表を作成する。

②労災であれば労基署が行う関係者からの聴取手続きはなし。

③追加調査も所属長宛に行われるため、所属長への協力依頼が重要となるなど、

労災以上に周到な準備が必要であると話しました。

また、今回の教員の自死事件について申請に当たっての留意点についてコメントしました。
参加した高校教員は「今回の事件は他人ごとではない。遺族を支えて今回の事件が「公務上」となるよう支援したい」と語っています。

飲食店勤務の弟・調理師は過労死:労災認定めざし、証人尋問

千歳市内の飲食店に勤務していたM・Sさん(男・当時62歳・単身)は2011年7月、激務が続く中、自宅で脳出血を起こし死亡しました。札幌に住む姉のKさんが、「月308.5時間」というメモを見つけ「弟は過労死に違いない」と、翌年4月労災申請しました。しかし、労基署は経営者の意見を鵜呑みにして不支給決定とし、審査請求、再審査請求も棄却されました。

家族会議を行い、このまま泣き寝入りできないとKさんは2014年5月「労災不支給決定の取り消しを求める行政訴訟」を提訴しました。以後、2年4ヶ月間、札幌地裁で12回にわたる期日が行われてきました。

口頭弁論の中では、経営者の「下働きだった」「時間外は少ない」「長期に休んでいた」「朝お酒が臭く、アル中の様だった」などの主張に対して、同僚や友人とのメールのやり取り記録や当時本人が使っていた手帳を見つけるなど新たな証拠を出し、医師意見書も提出しました。そして、いよいよ結審前の証人尋問が行われることになりました。Kさんの尋問は、9月13日午後2時から札幌地裁で行われます。過労死を考える会(家族の会)は傍聴支援を呼びかけています。

バス運転手:運転中の脳出血で左半身マヒ労災認定!

バス運転手A氏・男性、55歳は、2015年8月定期バスで札幌市内を運転中に脳出血で倒れ労災申請していた事件で、労災支給が決定しました。

A氏は、左半身マヒ、意識・見当識障害など障害1級となり、入院治療が続いています。勤務拘束時間は月288時間、公休は月4日という過重な勤務状態でした。

妻がいの健センターに相談し弁護士、交通、運輸関係の労組とも連携をとりながら、労災認定をめざしてきました。この事件を契機に、バス運転手の労働条件改善に向けた取り組みをめざしています。

過労死防止対策の強化を!2015年度過労死等の労災補償状況

2015年度は、脳・心臓疾患と精神障害の労災申請件数はいずれも前年を上回りましたが、支給決定数はいずれも前年を下回りました。
厚生労働省は6月24日、2015年度の過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について「過労死等の労災補償状況」を公表しました。
脳・心臓疾患の労災申請数は、795件(前年度比32件増)。支給決定件数251件(前年度比26件減)、うち死亡件数は96件(前年度比25件減)。
申請件数が多いのは「運輸業、郵便業」181件、「卸売業、小売業」116件、「建設業」111件で、支給決定件数では「運輸業、郵便業」96件、「卸売業、小売業」35件、「製造業」34件の順となっています。1か月平均の時間外労働時間数別支給決定件数は、80時間未満は12件で支給決定の5%でした。80時間以上の合計は225件でした。
精神障害の労災申請件数は1,515件(前年度比59件増)、うち未遂を含む自殺件数は前年度比14件減の199件でした。
支給決定件数は472件(前年度比25件減)、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比6件減の93件でした。
申請件数が多いのは、「製造業」262件、「医療,福祉」254件、「卸売業、小売業」223件の順に多く、支給決定件数は「製造業」71件、「卸売業、小売業」65件、「運輸業、郵便業」57件の順でした。
1か月平均の時間外労働時間数別支給決定件数は、「80時間以上の件数は192件でした。
出来事別の支給決定件数は、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」75件、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」60件の順でした。

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4野党・全労連・連合・全労協など労基法の抜本改正で一致

長時間・ただ働き横行ただす
民進党、日本共産党、生活の党、社民党は、労働基準法改正案を共同提出しました。
日本は、ILO第1号条約(8時間労働制)を批准しておらず、諸外国と異なり労働基準法で残業時間の上限を定めていません。
長時間労働は野放しにされ、サービス残業(ただ働き)も横行し、過労死等の重大な問題になっています。法案は、残業上限の規制、連続休息時間の保障、裁量労働制の規制、労働時間の抜本短縮など、労働者の生活と健康を守るものとなっています。また、労働時間短縮によって安定した雇用の拡大も期待できるものです。

Kスーパーのパート販売員Nさんパワハラで労災申請

Nさん(女性・52歳)はパートでしたが、メガネ売り場では一番の売り上げでした。にもかかわらず、同性の上司とその上の副店長から執拗ないじめ・嫌がらせを受けました。日常的に、「達成困難なノルマを課せられ、達成できないと反省文の提出を求められる」「お客さんの前で叱責され謝罪を求められる」「規定上、違反でないのにタートルの着用を禁止される」「トイレに行くことを監視される」などが続いていました。店の商品の紛失事件では、一方的に責任を追及され、解雇につながるカウンセリングを受けました。

2014年4月には出勤できなくなり、「適応障害」の診断を受け休業しました。復職後は肉の試食販売部門に異動させられ、慣れない業務に追われて「両手部腱鞘炎」で労災となりました。しかし、スタッフ不足との理由でフルタイム並みの過重な勤務に組み込まれ、11月下旬、腹痛・嘔吐などで救急搬送され以後、休業扱いとなりました。そして2015年3月、一方的に解雇されました。

Nさんは昨年9月、いの健センターに相談し、以後、話し合いを重ねて「陳述書」を作り上げ、弁護士の意見書を添えて、先月、労災申請を行いました。

尚、家族、職場の元同僚、お店のお客さん等からの7通の意見書も添付しました。