3年間でアスベスト労災41件

  勤医協中央病院のとりくみ

勤医協中央病院は、石綿健康管理手帳健診の受託医療機関です。「石綿手帳」所持者は職場でアスベスト暴露し呼吸器疾患にり患した人に交付され、年2回の検診を受けることができます。勤医協中央病院では2018年は延べ280人が受検しました。

アスベスト関連疾患(肺がん、中脾腫、胸膜肥厚・良性胸水)の患者は2016年4月~2019年3月までの3年間で、60人でした。このうち47人が労災申請し、認定が41人、現在申請中2人、不支給決定が4件でした。

Aさん(60歳代・男)は定年まで43年間、サッシ工として働き、16年9月に他医院で異常陰影を確認され、17年8月当院で胸腔鏡下肺部分切除術施行し、手術検体より石綿小体測定を実施し47,389本/g(乾燥肺)を検出。原発性肺がんの労災認定基準である「胸膜プラークに石綿粉塵暴露歴10年以上」それに加え石綿小体測定5,000本/g乾燥肺をクリアしていることを確認し11月、労災申請を行い、18年3月認定となりました。

業務上の要件を満たさなかった場合、環境省による「石綿救済法」の基準を満たせば医療費や療養手当てが支給されます。当院では3年間で6件が該当となりました。労災と合わせて47件が補償を受けています。
わが国では1960年~90年代までアスベストが使用されていました。30年~40年を経過して症状が現れると言われており、呼吸器疾患の場合、アスベストを疑い、精査することが必要です。

勤医協中央病院・医事課  小川 浩司

請負型の働き手、全国170万人

 「広い労働者概念」に基づく権利保障を

厚生労働省の「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」は企業から報酬を得る請負型の働き手が約170万人いるとの試算を示しました。これは自営業者約538万人に対する調査結果です。
請負型で最近増えているのが、飲食宅配サービスの配達パートナーやウェブデザイナーといったインターネットを通じて仕事を請け負う働き手です。労働者のように働いていますが、企業の健康保険や厚生年金には加入できず、労働法上の保護はありません。
調査では、働き方の実態もまとめ、取引先企業とのトラブルで最も多かったのが「報酬の支払いが遅れた」(18・7%)、「仕事の内容・範囲についてもめた」(17・4%)、「報酬が一方的に減額された」(13・3%)、「報酬が全く支払われなかった」(7・5%)でした。

独立自営業者を続けるうえでの問題点について、「収入が不安定、低い」(45・5%)が最も多く、「仕事を失った時の失業保険のようなものがない」(40・3%)「「仕事が原因でケガや病気をした時の労災保険のようなものがない」(27・7%)と答えています。

2016年1月、厚労省は「働き方の未来2035」を発表し「2035年の企業はミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となり、多くの人はプロジェクトの期間内はその企業に所属するが、プロジェクトが終了するとともに別の企業に所属する・・・・・人は事業内容の変化に合わせて柔軟に企業の内外を移動する形になっていく」と未来を描きました。その後、「会社員は消える」「自分の仕事は自分で守る」などの「フリーランスの勧め」が広がりましたが、先陣を切ったアメリカでは請け負い就労者が減少し、イギリス・フランス・ドイツでも労働者と同等の保護政策がとられています。
厚労省の「検討会」ではこうした実態と世界の流れをくみ取った対策を講ずることが求められています。

        いの健ニュース 2019.6.1号から転載

「産業医の新たな役割」を考える

 働き方改革関連法案

  医師不足と産業医

「働き方改革関連法」が今年の4月から施行された。同法は労働基準法や労働安全衛生法など関連法8法を一括し、細部の検討なしに決めたため今後様々な問題の発生が予想される。高度プロフェッショナル制度も現時点でまだ全国での利用者は1名のみとの事である。医師の長時間労働も5年先送りされ、地域医療を支える病院や研修医については上限を年1860時間に設定など異常な長時間労働を容認する内容で検討されている。日本の届け出医師数は約31万人で、人口10万当たり世界55位(WHO統計)と先進国では最も少ない。医師不足の中での今回の改正安衛法は産業医の中立性や権限強化を目的としている。詳細は省くが第13条第5項では産業医の「勧告権」も追加された。なぜいま産業医の勧告権なのか?

  衛生委員会での産業医の役割

安衛法18条では、事業者には常時50人以上の労働者を使用する職場に衛生に関し調査審議して事業者に意見を述べるための衛生委員会設置が義務付けられている。また委員会は月1回以上開催し、委員会構成メンバーとして産業医1名を選任(嘱託)する。1000人以上の職場では専属産業医が必要である。
産業医は月一回の職場巡視を行い、衛生委員会に出席し(義務ではない)「事業場において労働者の健康管理等について専門的な立場から指導・助言を行う医師」であり、あくまで相談に乗る立場である。そもそも労働者の安全や健康は事業主の責任で守られるべきであり、それを監督助言指導するのは労働基準監督官であり産業医ではない。
しかし長時間労働、高ストレス者の面接指導により産業医が就業上の処置(就業制限や要休業)が必要と判断し意見を述べても事業主が適切な対応をとらない事案から過労死に繋がる問題も指摘されていた。

産業医数はおよそ10万人(日本医師会登録)と多いが、専属は約1500人と少なく大半が嘱託(本業は別)である。急に産業医に権限強化と言われても違和感があるのが現状である。しかも「勧告」は「特別な手段であること」となっており定義もあいまいである。5月末に名古屋で行われた産業衛生学会でも「勧告」の解釈にも様々な意見があった。労働者の健康を守る観点で見ると、改正を契機に事業者に確実に安衛法を遵守させていく事が重要ではないか、と感じている。

                                                                                 勤医協札幌病院 医師・産業医 細川 誉至雄

「働き方改革」による働き方

 「雇用によらない働き方」で、労働者の権利を侵害するな!

 4月12日に厚生労働省は、「個人請負」など、雇用に類似した働き方をする人が170万人に上っているとの調査結果を公表しました。

自ら求めて個人請け負いの仕事を行っている人もいるでしょうが、これとは別に2017年から私たち、ローカルユニオン「結」に寄せられる相談の中に使用者から個人請負になるように迫られるケースが出てきました。
①求人募集に応募したが、個人事業主扱いでトラック運送業務をさせられている。車両    はリースでガソリン代も自分持ち、健康保険もない。日当11,000円で、会社できめたコースで、時間が長く仕事がきついので辞めたい。
②美装会社でパートの清掃労働者として働いていたが、業務を縮小するから辞めるか個人請負になるか選択を迫られ、同僚の3人は致し方なく個人請負になった。
③建設会社に35年も勤務している60代の営業職だが、売上が下がっているとの理由で退職か個人請負になるかの選択を迫られ、うつ病となり休職している。
④ドーコンの下請け会社で、開発工事による環境破壊などの調査業務をしている男性は、社長から生産性が悪いと退職か個人事業者になるかを迫られている。など

2016年までほとんど無かった個人請負への転換を迫られるケースが増えています。使用者は、アベノミクスによる聖域の無い規制緩和によって激烈な生き残り競争を強いられています。従業員を個人請負に転換させ、労働コスト削減を図ろうとする使用者が増えているのは、そのような背景からきているのではないでしょうか。
安倍政権が進める「働き方改革」は、雇用によらない多様な働き方を増やす方向を打ち出しています。労働基準法、最低賃金法、労災保険の適用がなく、企業の健康保険、厚生年金への加入が出来ない個人請負は、社会的セーフティネットから外れるだけで無く、厚生労働省の発表のように多くの場合、低賃金を強いられています。雇用によらない働き方は、不当な合理化のためですから、これが増えると雇用契約による労働者の労働条件も低下させ、職場環境を悪化させると警鐘をならす必要あります。

吉根 清三氏 札幌ローカルユニオン「結」労働相談員

最低賃金、全国一律引き上げで地域の再生・活性化を!

 4月11日16時から、衆議院議員会館で、自民党最低賃金一元化推進連盟の「ヒアリング②」が開催され、黒澤幸一全労連事務局次長が「全労連全国一律最低賃金要求について」説明しました。説明の要旨を掲載しました。

最低賃金一元化推進議連のみなさんが、接近の仕方が私たちと違っても一番高い東京水準を掲げて最低賃金の全国一律制を実現させようと取り組まれていることに注目し期待しています。
全労連は、結成から30年、行動綱領で三つの要求、大幅賃上げと労働時間短縮と並んで、全国一律最賃制度の実現を求めてきました。この間 35万筆余の請願署名を集め、地方議会での意見書採択をすすめ、このようなTシャツでデモンストレーションをしたりと取組みを進めています。日本の賃金は世界水準からも劣後 地方や職場から寄せられる声は切実です。「最低賃金 786円では低すぎ。健康で文化的な生活を送ることは到底無理」「最賃は、今すぐ千円以上に」「 地域経済を支える中小企業を守る仕組みを追及して」など声が寄せられています。
①あまりに低すぎ、それだけで生活するのは難しい。
②地域間格差があり、差別的状況にある。
③中小企業支援策が貧弱で、国際比較でも極めて低い水準にあることです。
地域別格差では高い東京の時給と低い鹿児島では 224円もの格差があり、毎年拡がっています。日本の中小企業支援は、87億円の実績にとどまり、フランスの2兆円規模の対策と比して極めて貧弱です。最賃上げて、生活を底上げし、地域を元気にできるように、最賃を決めるベクトルを変える政治決断が必要です。

ある県の知事は「同じ全国チェーンのコンビニの賃金が異なっていることに、強い違和感を覚える。全国一律にすべき、これによって企業がつぶれる事はない」と述べています。全国知事会からも、地域経済の好循環の拡大に向けて国に要請が上がっています。地域別最賃が人口流失を招き、地域経済を疲弊させています。 「最賃が低い地域は賃金が低い」これが実態です。最賃と賃金の相関は極めて高く、 最賃を上げない限り、賃金は底上げされません。 厚労省の資料でも15歳から29歳の若者たちが都市部に流れているとデータが示しています。地方の人の流出が地域経済を疲弊させていることは明らかです。数年かかっても日本の最賃を全国一律制にしていくことが、「格差と貧困の是正」と「地域経済の再生・活性化」のために必要不可欠です。又、産業・業種別の特定最賃はしっかりと残す必要があります。

最賃が上げられることと失業率に相関性はありません。イギリスなど世界の事例を見ても明らかです。日弁連の経営者協会などへの聞き取り調査でも、「最賃上がったことで、会社がつぶれている状況にはない」(青森、鳥取)と報告されています。むしろ 最賃引上げで経済波及効果が期待できます。 大きな地域間格差とあまりに低い最賃を是正するには中小企業支援が必要です。社会保険の企業負担減免など世界の好事例を参考に、実効性のある中小企業支援策をセットで行うことを求めたいと思います。
最賃の抜本引上げと全国一律化によって国民の所得が増えて国内生産が誘発され、地域経済の活性化や 地域循環型の経済が元気になっていきます。

最後に、まとめとして三点、要請したいと思います。
一つは、「格差と貧困の是正」と「地域経済の活性化」のために一日も早く全国一律最   賃制度を実現させるためにご尽力いただきたい。
二つ目は、若者も女性も非正規雇用も、すべての労働者の生活を守るため、最低賃金の抜本的に引き上げにご尽力いただきたい。
三つ目に、そのために実効性のある中小企業支援策を具体的につくっていただきい。このことを お願いして終わります。

流暢性障害(吃音)のある新人看護師の裁判の状況

                                                                                     弁護士 安彦 裕介

流暢性障害(吃音)を負っていた新人看護師の男性が、就職してから僅か約4か月後に自死された事件について、現在、札幌地方裁判所において、労働基準監督署長による遺族補償給付等を支給しない処分の取消を求める裁判を行っています。
この新人看護師の男性は、病院への就職から約3か月後に適応障害を発病され、その約1か月後に自死されました。ご遺族は、男性の発病及び自死について、病院における業務に原因があるとして労災請求を行いましたが、労働基準監督署長はこれを認めず、その後の労働者災害補償保険審査官に対する審査請求、及び労働保険審査会に対する再審査請求においても同じ結論が維持されたため、一昨年の11月に、裁判所への提訴に踏み切ったものです。
男性は、患者に対して吃りのない説明を行うため、事前に指導看護師らに説明の練習を行っていたのですが、重度の流暢性障害(吃音)を有していたことからこれをうまく果たせず、繰り返しの練習を余儀なくされていました。また、この病院の就業規則には、採用後3か月間の試用期間の定めが置かれていましたが、試用期間経過後、同期の新人看護師が本採用される中で、男性は一人だけ試用期間を延長されていました。
これらのことから、裁判では、①重度の流暢性障害(吃音)を有する男性に繰り返しの説明練習を強いることは、障害者への「嫌がらせ、いじめ」に当たるのではないか、②このような状況下で試用期間を延長されたことは、「達成困難なノルマ(業務目標)」を課した上での「重いペナルティ」に当たるのではないか、等のことが問題となっています。
被告(国)は、これらの争点について、男性への説明練習は強制的なものではなかった、あるいは男性に課されていた業務目標は達成困難なものではなかった等と主張して、全面的に争ってきています。
現在は、原告と被告との間で、書面によってお互いの主張を闘わせている段階であり、今後、関係者への尋問や判決へと続く予定です。皆様方のご支援の程、よろしくお願い申し上げます。

 

 

振動病の労災申請の動向

  振動病の労災申請の動向と道東勤医協のとりくみ

 2018年北海道セミナーでの道東勤医協の吉岡 猛医師の報告に対して、細川誉至雄医師から概要を紹介する寄稿文が寄せられました。

「振動病」は現在も新規労災認定数は減ることなく推移しているが診断・治療できる医師や医療機関が少なく、診断や労災申請において大きな問題となっている。
昨年10月20日~21日に釧路で行われた北海道セミナーで道東勤医協釧路協立病院整形外科の吉岡 猛医師より、2017年度北海道の振動病新規認定患者のおよそ70%が釧路協立病院での申請である事を伺い、大変驚いた次第である。会員の皆様も振動病についてなじみのない方も多いかと思いますのでその取り組みの一端を紹介したい。

1.振動病(振動障害)とは                                                                                         振動病とは削岩機、チェーンソー等の手持ちの振動具を相当期間使用する事で発症する疾病である。別名白ろう病ともいわれる様に、寒冷で手指が真っ白になる(レイノー症状)こともある。症状としては大きく3つ、①手指の末端の血液循環が悪くなって起きる「末梢循環障害」②手指のしびれや痛みが起こり、熱さ・冷たさ、痛みなどの感覚が鈍くなる「末梢神経障害」③手指、肘の痛みが起こる「骨・関節の障害」の3障害がある。診断では職歴が一番重要で、どのような工具を何処でどの程度使用したかを聞き取り、工具の使用時間も聴取する。そしていつ頃から、どのような症状が出てきたかを詳しく聞き手指や前腕のしびれ、冷えの範囲、レイノー現象の有無、痛みの有無、神経学的所見の有無を診る。振動障害の疑いがあれば精密検査行う。認定基準に合致すれば労災申請を行う、過去には郵便局のオートバイの配達員なども振動病で認定されたこともあるようだ。

2.認定基準と患者数の推移
認定基準は75(昭和50)年に始まり1977(昭和52)年に改訂、現在に至る。1978年の振動障害の新規労災認定患者は259人。またじん肺の有所見率は10%前後であった。最近10年間の振動障害での新規労災補償状況は年間約250~300人とほぼ横ばいで推移し、16年度の療養継続者は5,393人である。業務としては建設業が最も多く、次いで林業、鉱業、製造業と続く。

3.道東勤医協釧路協立病院での取り組み
釧路協立病院では開院以来振動病治療を開始し、07年には太平洋炭鉱閉山後離職者検診を行い30人以上が振動病で新規労災認定された。その後の認定数には変動があるが2017年度北海道の振動障害認定患者96人中67人(約70%)が釧路協立病院での申請である。認定率も76%と驚異的である。全道から受診や紹介があり認定後も治療のため通院先を決め紹介する。紹介先は道央、道東、北網圏、札幌と広範囲に及んでいる。

以上、振動病の現状と道東勤医協の取り組みを紹介したが、振動病はアスベスト疾患と同様に潜在患者は多いと推定される。しかし診断や労災申請、そして治療してもらえる医療機関も少ない。また症状固定として休業補償を打ち切られるなど、行政上の問題も多く、いの健道センターとしても取り組みを強めていく必要があると感じた。

勤医協札幌病院
細川 誉至雄医師  いの健道センター理事長

出入国管理法改定

外国人労働者の受け入れ拡大

 人権侵害まん延・拡大の危険

                                                   小野寺 信勝 弁護士(北海道合同法律事務所)

  北海道に8,500人の「技能実習生」

入管法改正では、「特定技能」という新たな在留資格を創設し、非熟練労働者の受け入れを目指しています。
日本政府は入管法改正の理由は「深刻な人手不足に対応するため」と説明しています。日本政府は一貫して非熟練労働者の受け入れを認めてきませんでした。その代わりに、外国人労働者を「技能実習」という本来、労働を目的としない在留資格によって大量に受け入れてきました。全国では28万人超の技能実習生が在留していますが、北海道は主に水産加工と農業分野で約8,500人もの実習生を受け入れています。このようないわゆるサイドドアによる受け入れの増加は、同時に、技能実習生への深刻な人権侵害も生み出しました。低賃金・長時間労働、逃亡防止のための強制貯金や旅券の取り上げ、強制帰国、暴力などその被害は深刻です。日弁連は人権侵害の温床である技能実習制度の廃止とそれに代わり非熟練労働者受け入れのための資格創設を求めてきました。
政府はついに非熟練労働者受け入れに舵を切ろうとしています。「特定技能」という在留資格の創設がそれにあたります。

  「特定技能」の問題点

ところが、「特定技能」の創設にはいくつもの問題があります。
まず、特定技能が創設されても技能実習制度は廃止されません。つまり、技能実習生の人権侵害の問題は残されたままとなっています。また、「特定技能」は1号と2号に分けられ、2号は1号からの移行を想定しています。技能実習1号では最長5年間の在留を認められますが、この間は家族帯同が禁止されています。家族が共に暮らせないのは非人道ですし、日本政府も批准する自由人権規約や児童権利条約では家族が共に暮らす権利を保障しているように、人権上も問題があります。さらに、技能実習制度は民・民での受け入れのためブローカーが介在し、多額の保証金や違約金など悪質なケースが多く発生していました。特定技能も同じ枠組で受け入れるため、ブローカーが介在する問題が残ります。

  外国人との共生政策は喫緊の課題

そして、なにより外国人との共生の視点が欠如しています。安倍首相が「移民政策ではない」と喧伝していますが、この発言は外国人を労働力とのみみなし「生活者としての外国人」の側面に目を向けないと宣言したに等しいと考えています。

過労死防止対策シンポジウム 

『過労死ゼロの社会を』

  川人 博 弁護士が基調報告

11月22日札幌市内で、厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催され、経営者、会社員、公務員など149人が参加しました。基調講演、体験報告、取組事例報告などから学びの多いシンポジウムとなりました。

「女工哀史」と過労死

冒頭、紡績工場の女工の「過労死」に触れ、日本では明治・大正・昭和初期にも過労死は発生していたとし、今日につながると指摘しました。
戦後の新憲法下で一日8時間の労働基準法が制定されましたが、高度成長下で長時間労働が経営システムに組み込まれ、今は「生き残り」をキーワードに過労、ストレスが広がり、過労死の認定者は年間800件、うち死亡事案は200件。
しかし、労災認定者は過労自死事案の「氷山の一角」。自殺統計からみると、労災認定者は推定で4~8%に過ぎないとしました。

留意すべき過労死事案

最近の過労死の事例として、①若年労働者の問題、②管理職の問題、③裁量労働制の労働者、④看護師の過労死、⑤海外出張者、⑥高齢者・障害者の過労死などの事例を報告しました。

「過労死」検討の課題

過労死対策を考えるうえでの課題として次の5点を提起しました。
①「過労死が発生する職場では業務不正も発生することが多い」として、足元から企業  の健全な発展を目指すこと。
②「たかが労基法違反」との意識を払拭することが必要として、適正な労働時間管理と業務量と人員配置に留意することに会社役員・幹部は特段の配慮をすることが不可欠。
③「ハラスメントを生む土壌を無くすこと」が重要。上司自身が疲弊し、部下へのハラスメントの要因になっていないか?と問いかけ、かつての日本軍の暴力・いじめの構造と指摘された「抑圧の移譲」が引き継がれていないかと問いかけました。
④近年は「お客様は神様」と強制され、客も労働者も人間であるという当たり前のことが忘れられていると警鐘を鳴らしました。
⑤最後に労働組合の役割の重要性を指摘し「全職場で労使の話し合い」をと呼びかけ、特に勤務時間に「インターバル規制を」と強調しました。インターネットの普及で24時間メールでの指示が出る状況について、フランスでは「業務メールを見ない権利」が法制化し、「オフの時間を確保」していると報告しました。

多くの過労死事件を担当され、過労死等防止対策の中心メンバーとして活躍している川人弁護士の講演は各層からの参加者に「過労死ゼロ」に向けて多くの示唆を与えてくれました。

 

『取り組み事例報告』

 北大生協の労働安全衛生活動

   岸本 敬一   北海道大学生生活協同組合 専務理事

〈北大生協の概要〉

広い大学の構内に食堂や店舗など34の事業所があり、毎日2万人が利用しています。1万人は食堂利用者です。飲食部門は人手不足が続き、残業も増えがちで労働時間管理にも苦労しています。

〈衛生委員会の概況〉

正職員は47人、パート等が279人、アルバイトが188人で、約600人の職員の衛生管理を委員会が担っています。構成は統括責任者の専務理事と産業医、委員は労組から3人とオブザーバーなど合計8人です。毎月実施しています。

〈活動内容〉

① 労働時間の調査
毎月、全職員の時間外を把握しています。45時間と80時間を超える場合は色分けで表示され、その人の業務内容の見直しや体制の整備を検討します。

② 労災対策
各職場内、通勤事故での転倒や骨折の未然防止を呼び掛けています。冬場が大変です。また、食堂でのやけどやケガ、腰痛対策が重要です。

③ 休日労働の把握
労組に報告し、振替休日を与えることにしています。しかし月内消化が困難です。

④ 職員健診とストレスチェックについて産業医に対応してもらっています。

⑤ 職場巡視
毎月、巡視しています。年に1回はすべての職場を回る事にしています。空調・湿度・水漏れ・やけど対策などを基本に点検し、報告書を作成し、改善する場所を写真に収めて管理者に知らせています。

⑥ その他、
メンタルヘルス研修会(所属長向け)、弁護士による働くルールの講演会(パートも含む)、インストラクターやカイロプロティスクによる腰痛や肩こりなどの予防対策などを行っています。
みんなで働きやすい、健康で安心できる職場を作ることに努力しています。

施策説明

「最近の労働基準行政の動き」をテーマに北海道労働局労働基準部監督課長の戸高正博氏が報告しました。
北海道の労働時間、有給休暇の取得状況、労基署に寄せられた法令違反の状況。厚生労働省の過労死ゼロ緊急対策について説明がありました。

新人看護師のパワハラ自死労災不支給処分取消事件

 村山 譲さんのパワハラ自死労災不支給処分取消事件

 公正な裁判によってパワーハラスメントのない職場をつくるための請願署名

2013年、釧路赤十字病院の新卒看護師村山譲さんがパワハラ自死した事件で、遺族が提訴した労災不支給取り消し裁判は9月18日、第2回期日でした。
国は原告の訴状に対する認否を行いましたが、一般論に終始し、パワハラの事実に関しては「否認」または「争う」とするのみで具体的な主張はありません。次回期日は12月20日です。 釧路市を中心に作られた「支援する会」では「公正な判決を求める署名」に取り組んでいます。皆さんのご協力をお願いいたします。

         

村山さん署名用紙

2018年北海道セミナーIn釧路

「いのちと健康第一」の働き方を!  

 メンタルヘルス・パワハラ、働き方、 労災補償、アスベストなど討論

2018年働く人びとのいのちと健康をまもる北海道セミナーは、10月20~21日、8年ぶりに釧路市で開催し、地元をはじめ十勝・北見・札幌などから94人が参加。講演と報告、討論で学びあい交流しました。

細川誉至雄実行委員長(いの健道センター理事長)は「『働き方改革』が成立しましたが、悪法を職場に持ち込ませず、いのちと健康を大切にする職場づくりが大事です。胆振東部地震でブラックアウトとなり、各地に大きな被害が及びましたが、防災対策、災害時の対応などを見直し、安心できる職場・地域づくりを進めてゆこう」と開会あいさつを行いました。 吉岡猛現地実行委員長(道東勤医協釧路協立病院:医師)は、自らの振動病など労災・職業病の診断・治療の実践を踏まえて、セミナー開催の意義にふれ、人間らしいまともな働き方の実現目指して学び、交流してほしい」と歓迎挨拶を行いました。 続いて、佐藤誠一実行委員会事務局長が「基調報告」を行いました。

 

  記 念 講 演

「みんなで取り組む職場 のメンタルヘルス対策」
     講師 田村 修氏  (勤医協中央病院精神科・リエゾン科医師)

講演はスライドを示しながら3択での選択を聴講者に問いかける、全員参加型を取り入れました。 「心の健康とは」ストレスと上手に付き合うことであり「程よい苦労をしながら、自分らしい人生を送る事」とし、過剰なストレス下で身体的反応→行動の変化と心理的反応→思考の変化に陥るとしました。職場のストレッサーは①仕事の量(長時間労働・過重労働)②仕事の質(専門性・責任・苦情処理などの感情労働)③周囲のサポート(孤立・抱え込み・コミュニケーション不全)などがあるとしました。 厚労省はメンタルヘルス対策の「4つのケア」①セルフケア、②ラインによるケア、③事業場内産業保健スタッフによるケア、④事業外資源によるケアを紹介し、セルフケアのコツとして「自分をよく知る」「ストレスに気づく」「ストレスと上手に付き合う」ことしました。 職場の仲間に①体調不良で休む、②仕事の能率が落ちる、3対人関係のトラブルが起こる、④交通事故・飲酒問題などが起こる場合、メンタル不調が疑われ、うまく「介入」すること、積極的傾聴法について説明しました。また、休職した場合の休職中の対応、復職にあたっての職場の対応について具体例を示してその基本を示しました。 大事なことは「メンタルヘルス対策はみんなのためである」とし、問題の発生は職場環境改善の糸口であり、職場全体に還元されるとし、全員が「お互い様」の関係にあることを理解しあって対処することと指摘しました。

  全 体 会  特別報告(概要)

おさえておきたいパワハラの基礎知識    安彦 裕介氏(弁護士)

セクハラは法的定義があるが、パワハラは定義がない。厚労省は2012年に「円卓会議」の提言、今年3月に「検討会報告」の概念を示している。職場のパワハラの責任を巡る判例を示しながら、使用者の権限と関連しない場合と、する場合での対応の違いについて指摘した。パワハラが起こった場合の対処の留意点、パワハラと労災補償の問題点などを示した。

働く自営業者の実態     岩淵 裕氏(釧路民商)

全商連共済会の「17年度健康診断結果」をもとに、自営業者の有所見率は8割台に上っており、一般労働者の健診結果の5割台を大きく上回る。自殺者は42人で初診から死亡までの期間が短いと厳しい実態を報告。 釧路民商の「経営・暮らし・健康」調査では、健康不安がある58%であるのに対して3割は病院に未受診。理由は「忙しい」「治療費が高い」などで、休みが取れない状態。自営業者のいのちをまもる活動が大切。

私の事故体験と対策     箕浦  邦雄氏(農業)

十勝管内の農家の過去5年間の傷害事故者は平均10%。農家戸数が減っているのに減少しない。自身、多くの事故を体験し、その予防策を考え実践してきた。その具体例をスライドを交えて12項目報告した。

日赤病院のパワハラ自死事件   支援する会・原告

新人看護師が手術室に勤務し、5ケ月半で自死。医師から「病院のお荷物」などと言われ、研修記録では上司等からのパワハラも受けていた。しかし、労災は不支給となり、今年4月、不支給の取り消しを求めて提訴した。地元で組織している「支援する会」の活動と、原告(母親)から「安心して業務が行われることを願う。署名への協力を」と訴えがされた。

 

 

杉本 綾さん過労死、労災認定

    国が自ら裁判を取り下げ

2012年、過労自死した杉本綾さん(当時23歳)の労災の不支給処分の取り消しを求める裁判は、年内結審に向けて大詰めを迎えていましたが、急展開となりました。10月17日、札幌東労基署と北海道労働局の関係者が、原告・弁護団に対して「不支給処分を取り消し、労災を認める」と伝えました。行政庁が自らの決定を取り消すのは異例のことです。
「新卒看護師の労災認定と裁判を支援する会」は10月26日、「杉本綾さん過労死裁判報告集会」を開催。弁護団は、「国は、原告が主張した自宅に持ち帰った仕事(シャドーワーク)について、、研修レポート作成や業務に関わる準備作業を労働時間として認め、昼休み休憩も毎日30分しか取れなかったとして、投薬ミスのインシデントの前後で月100時間を超える長時間労働があったとして認定基準に合致し、労災支給することにした」と説明しました。

しかし、「新人看護師や急性期病院の看護業務の過酷さなどについては反映されていない」とし、労災認定になったことは評価できるが、今後の課題も残されていると報告しました。また、民事訴訟の課題にも触れました。
原告(母親)は「この結果はみんなの力、そしてメディアの力です」と謝意を述べ、綾さんがのびのびと豊かに育ってきた経過を語り、苦しかったたたかいについて、「綾の死だけでなく、助けられる人がいるかもしれないと思い必死に生きてきた。一人で家にいると、毎日のように思い出し涙が出てくる日々。こういう気持ちの親をもう作りたくない」と語りました。

集会では「支援する会」共同代表の鈴木緑さん(北海道医労連執行委員長)がお礼と報告を行い、医師意見書を提出した田村修医師、日本医労連の森田しのぶ委員長、道労連の三上友衛議長、国共病組本部の工藤めぐみ副委員長などとともにいの健道センターの細川誉至雄理事長が、お祝いとともに「成果を今後に生かしたい」と挨拶しました。他の団体・個人から心温まる挨拶が続きました。

釧路日赤病院、看護師パワハラ自死事件

労災不支給取消求め提訴

釧路赤十字病院に勤めていた新人看護師、村山譲さん(当時36歳)が自殺したのは、職場でのパワーハラスメントが原因だったとして、遺族が2018年4月24日、国に労災認定を求める訴えを釧路地裁に起こしました。
訴状では、村山さんは2013年4月に同病院に就職。仕事上のミスを理由に、新人看護師向けのカリキュラムに沿った仕事を与えられず、医師らから「おまえはオペ室のお荷物だな」などと暴言を受けてうつ病を発症し、2013年9月に自殺したとしています。
遺族は2015年9月、労災申請しましたが認められず、再審査請求も2017年11月に棄却されていました。

 支援する集会を開く

提訴の前日夜、釧路市内で「村山さんの裁判を支援する会」の集会が開催され、医療関係者、市民など50人が参加しました。
担当の和泉貴士弁護士は、新人で手術室に勤務した譲さんは、職場の上司による質問攻め・無視・暴言・仕事が与えられないなどのパワハラが繰り返され自死に至った経過を報告し、事実を究明することと合わせて、地域医療の問題も明らかにしたいと報告しました。

北海道医労連の油石博敬書記長は「KKR札幌医療センターで過労死した杉本綾さんの裁判等と合わせて支援してゆく」と決意を表明しました。また、北見日赤病院から参加した看護師は「新人時代、手術室に配置されたことがあり、仕事が覚えられずくじけそうになった。幸い配置替えで助かったが譲さんの苦悩は理解できる」と支援の決意を語りました。

母親の村山百合子さんは「息子は地方公務員を経て看護師になった。『仕事ができない』事はない」と語り、「問題のある職場環境を変えて二度とこのような事件が起きないようにと提訴した」と支援を訴えました 集会にはテレビカメラをはじめメディア関係者が多くの取材が入りました。

提訴して2年、やっと証人尋問へ

うつ病に罹患した21世紀総合研究所の主任研究員

 四年前に労災認定

Y氏(男・46歳)は(株)北海道21世紀総合研究所で主に環境、廃棄物処理・リサイクル分野の調査・研究を行っていましたが、月平均110時間を超える時間外勤務を余儀なくされ、2006年1月にうつ病を発症しました。休業中に主治医の意見を聞くこともなく研究所が症状が軽減したと判断して職場復帰させられた上、給料が減額され、退職勧告を受けました。パワハラも続き雇用不安を感じたため、弁護士に相談し、札幌ローカルユニオン「結」に加盟し「いの健センター」の支援を得て労災申請し、2014年1月発病時にさかのぼって労災認定となりました。

 民事訴訟提訴

研究所に対して「結」を通して減額された給料の支給などを求めましたが、拒否されたため、2016年1月、安全配慮義務違反と労務管理をせず、長時間労働やうつ病にり患した労働者を働かせ続けた故意または過失の不法行為があるとして、研究所と取締役で上司のH氏に対する損害賠償請求を札幌地裁に提訴しました。 請求内容は①賃金の減額分、②労災対象外の治療費、③逸失利益、④慰謝料等です。

 裁判進捗求める

提訴して2年が経過し,この間5回の口頭弁論と弁論準備を15回行いました。被告は裁判長からの和解提案に対して明確な態度を示さず、原告の提案を否定しました。その上、「研究員の仕事は本人の裁量で行っている」として「三六協定」の未届けや労働時間の無管理に無反省です。更に原告の病状について「治癒しているのでは」「主治医に会いたい」等と主張し、他の医師の「意見書」を提出しました。しかし、その内容は精神疾患の認定基準の解説が主でY氏の病状に沿ったものではありません。結局、裁判の引き延ばしを行ってきたかのような経過をたどりました。

 6月に証人尋問か?

2018年3月13日の弁論準備で、裁判長は証人尋問を前提に、原告に陳述書の作成を求めました。2018年6月には証人尋問が行われる見通しです。原告は「久しぶりの口頭弁論となります。原告は「久しぶりの口頭弁論となります。是非、傍聴支援を」と呼びかけています。

休憩中に車内でCO中毒死

 逆転で労災認定

2016年2月、商業施設(帯広市内)の製菓店で働いていたH氏(当時19歳・男)は、休憩中に自家用車内で一酸化炭素(CO)中毒で死亡しました。遺族が申請した労災補償は不支給とされましたが、国の労働保険審査会は先月、不支給とした帯広労基署の決定を取り消しました。

H氏は、施設の駐車場内の車内で昼食休憩中でしたが、当日は大雪の為、車内で一酸化炭素(CO)を吸い、亡くなりました。 遺族は、事業場には休憩室が無く、自家用車内で休憩を余儀なくされていたとして、帯広労働基準監督署に労災申請し、「帯広労連」を通じて、いの健道センターとつながりました。その後、不支給となったため、弁護士面談を通じて審査請求を行いました。棄却後、再審査請求を行い、ダメなら裁判も辞さないとしていましたが、1月26日付で労働保険審査会は、原処分を取り消しました。

急性一酸化中毒で死去した Hさんの終了事例

2018年1月26日、労働保険審査会は、帯広市内の商業施設内で働いていたHさんの急性一酸化炭素中毒のための死亡が業務上の事由によるものと認め、労働基準監督署長が行った遺族補償給付等の不支給処分を取り消す裁決を下しました(弁護団は長野順一弁護士、佐々木潤弁護士、瀨戸悠介弁護士、及び当職)。

Hさんは、業務の休憩時間中、商業施設の駐車場に停めていた自家用車内で休んでいたところ、当日の大雪によってマフラーが塞がれ、車内に流入した排気ガスによって急性一酸化炭素中毒を発症し、死去されました。

被災者の死亡が業務上の事由によるものと認められるためには、①「業務遂行性」及び、②「業務起因性」の要件が認められる必要があります。①「業務遂行性」とは、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあることをいい、②「業務起因性」とは、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験法則上認められることをいいます。

労働基準監督署長は、Hさんが、職場である店舗を出て休憩に入った時点で事業主の支配下を離れたとして、①業務遂行性を認めず、遺族補償給付等を不支給としました。この結果に対して、ご遺族からご相談を受けた弁護団が代理人として加わり、労働基準監督署長による不支給処分の取消を求めて、労働者災害補償保険審査官に対する審査請求を行いました。

弁護団は、①休憩時間中であっても、事業主が本件駐車場の利用料を負担していること等から、Hさんは事業主の施設管理下(支配下)で被災したものであり、業務遂行性が認められることを主張しました。また、②本件事業場には休憩施設が設けられていなかったため、Hさんには自家用車内以外に休憩場所がなかったこと、及び悪天候時の駐車場所を上司から指定されていたこと等に基づき、本件事故は事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものであって、業務起因性も認められるとの主張を行いました。

これに対して、労働者災害補償保険審査官は、本件事故に①業務遂行性があることは認めました。しかし、②業務起因性については、本件傷病が施設やその管理の欠陥に起因したとは認められず、また自家用車内の休憩行為は業務付随行為とも認められず、さらには天災地変に際して災害を被りやすい業務上の事情も認められない等として否定し、労働基準監督署長の結論を維持しました。

ご遺族及び弁護団は、この結論を不当として、労働保険審査会に対して再審査請求を行いました。その結果、労働保険審査会は、当方の上記主張のとおり、本件事故に①業務遂行性があることを認め、かつ②業務起因性があることを否定し得ないとして、労働基準監督署長が行った遺族補償給付等の不支給処分を取り消しました。

再審査請求でも結論が変わらない場合には、国を被告として取消訴訟を提起しなければなりません。争いを司法の場まで移すことなく、行政段階で終えられたことは、非常に喜ばしい結果であると受け止めています。また、再審査請求で労働基準監督署長の不支給処分が取り消されることは珍しく、その意味においても本裁決は大きな意義を有していると考えています。
                                                                                                   さっぽろ法律事務所
                                                                                                              弁護士 安彦 裕介

 

化粧品製造職員のうつ病

化粧品製造会社に勤務していたHさん(45歳・男性)は、入社以来、経営者に業務以外も隷属を強いられ、人格を否定される「パワハラ」を受け続けていました。2016年春に突然、取締役就任を強いられ、5ヶ月後に平社員に降格され、「嫌なら退職」と言われました。「抑うつ状態」となり休業し、2017年6月に退職勧告を受けました。
弁護士に相談し退職はストップをかけましたが、自宅療養は続いています。その後、妻の支援を得て、いの健センターで面談を重ね、2018年1月、労災申請しました。

大手製紙工場の過労死 調停で和解

2013年9月、大手製紙工場内で電気技師のAさん(当時30歳)が感電死しました。災害発生時は年に一度の「休転期間」で、工場は稼働を停止して設備の点検・保守を行っていました。担当のAさんは徹夜作業中で、9月は亡くなる21日まで、118時間の時間外労働を行っていました。
会社は労災事故として対応し、労災補償は認定されましたが、妻のMさんは「夫は過重労働に苦しんでいた」として、会社への損害賠償を求めるとして弁護士に相談しました。
一昨年、札幌簡易裁判所に調停を申し入れ、以後、9回の調停が行われ、昨年12月26日、謝罪、労災死の労働者の碑を建立する、解決金などで合意が成立しました。
Mさんは2人の子供さんを抱える中、亡くなって4年3ヶ月間、「過労死家族の会」の皆さんにも支えられながら、たたかい続けました。

製紙工場で過労死したAさんの解決事例

Aさんは、2013年9月21日、工場内での労災事故で亡くなられました。年に一度の「休転期間」という工場をストップさせての保守・点検作業中の事件でした。
最初のご相談のとき、既に労災の認定はされており、一定の長時間労働も認められていました。しかし、それ以上の証拠が手に入ることはありませんでした。私たち代理人が最も悩んだのは、妻Mさんのお話をお伺いし、これが過労死であると確信しつつも、正面から過労死と言えないという点でした。死因が感電死だったために、脳心臓疾患とも、精神疾患による自死とも言えず、長時間過密労働との因果関係が問題になるからです。訴訟ではこの点を乗り越える必要があり、それは非常に困難と思われました。
そこで、私たちが選んだ手続は、民事調停手続でした。民事訴訟と違い、民事調停手続はあくまでも当事者間の話し合いによる解決を目指します。そのため、会社がこれに応じなければそこで終了です。会社には内密に準備作業を進めてきたので、会社の態度は分かりません。いわば、一つの賭けに出たのです。
結果は成功でした。会社も真摯に対応してきたのです。こちらが求めた記録や、労働状況の改善案についてもある程度柔軟に提示してきました。会社の主張を前提としても、直近の時間外労働時間は、2013年9月1日から17日までで117時間であり、うち同月9日から17日までは13日間が連続勤務という長時間過密労働が行われていたことに争いはなく、会社にも訴訟移行した場合のリスクがあったからかもしれません。
今回、勝利的和解を勝ち取りましたが、そこへ至る道も困難の連続でした。調停申立てから、実に9回もの期日を重ねました。会社は、道義的責任を認めつつも法的責任は否定し、解決水準にも大きな開きがありました。謝罪の言葉にも大きな抵抗を示されました。 状況を変えてきたのは、常にMさんの思いでした。その強い思いは、会社や調停委員だけではなく、私たち代理人をも奮い立たせ、大幅な解決水準の引き上げだけではなく、会社側から社業の寄与に対する感謝、長時間過密労働を行わせたことへの謝罪、亡くなられたことへの遺憾の意をそれぞれ表明させ、労務管理の改善策を提示させるなど、訴訟では勝ち取りえなかった条項まで、勝ち取ることができました。
私たちにとっても、過労死案件を民事調停で解決させることは初めての経験でした。困難があっても諦めずに、事実を元に説得をする。その基本が改めて重要であることを教えて頂きました。
 北海道合同法律事務所
弁護士 池田 賢太

特別支援学校教員自死事件で公務災害申請

2017年12月、2年前に自死したS教員の遺族と代理人弁護士は、学校長を訪れ、S教員が自死したのは公務災害にあたるとして地方公務員災害補償基金北海道支部長宛の申請書を提出しました。
事件は生徒からの申し出でS教員の対応が問題とされ、当時の校長及び副校長から頻繁に面談が繰り返され、S教員は生徒の申し出を認めなければならない状況に追い込まれたとして自らいのちを断ちました。
遺書には「不当、偏見に満ちた面談」「「中立な立場の人が誰も存在しない」「自分の心を偽って証言するのは本当に苦しい」などと記されていました。
遺族はこの2年間、事実の立証のために、関係者の支援を受け弁護士とともに努力を重ねてきました。